月刊登記情報2011年9月号に「登記官の目 就任承諾書の方程式」(85頁以下)がある。よく整理されているので,一読をお薦めする。
いくつか気が付いた点を取り上げると,
「就任承諾は様式行為(要式行為?)ではなく,法人と役員の関係においては口頭での意思表示でも足りるとされ,就任承諾書以外の書類をもって充てることができる」
したがって,
「株主総会議事録に就任を承諾した旨の記載がない場合でも当該取締役が出席取締役として記名押印している場合は,株主総会議事録を就任承諾書として援用できる」
これは,善解理論によりOKである。
ところで,
「株主総会議事録に出席取締役の記名押印は求めていないが,出席した取締役・監査役等の氏名を内容とする必要があり(会社法施行規則72条3項4号),就任承諾書として援用するには『出席した役員』としての氏名の記載が必要である。この記載は「出席した役員」として氏名を明記するのが望ましく,『被選任者が即時就任を承諾した」旨,『被選任者がその場で就任を承諾した』旨の出席したことが伺われる(窺われる?)記載では不十分と考える」
とあるが,こういう考え方があるので,以前記事にしたとおり,「最近,新任の取締役に関しては,株主総会議事録に就任承諾の旨の記載がある場合においても,就任承諾書を添付せよとか,株主総会議事録に被選任者も記名押印せよとかいう行政指導(?)がされるケースが増えているようである」ということなのであろう。
cf.
平成22年11月3日付「取締役の就任承諾と株主総会議事録の記載の援用」
しかし,例えば,任期満了による改選時に新たに取締役又は監査役に選任された者のように,株主総会の終結後に就任する者は,株主総会に出席していたとしても,「出席した役員」には該当しないので,上記は,疑問である。
従来の登記実務の取扱いのとおり,「被選任者が席上就任を承諾した」旨の記載があれば,是とすべきである。
ところで,ところで,
「任期を選任の日から起算する会社・法人の場合,法定又は定款等に定める任期の期間を経過して就任の承諾をすることはできず・・」
そのとおりであるが,続いて,
「・・懈怠の責を問われることにもなる」
???
結果として就任承諾をしなかっただけであり,何をもって「懈怠」となるのか,意味不明である。被選任者から就任承諾を得られなかったことにより,法律又は定款で定める取締役等の員数に満たないときは,株式会社の取締役は,結果として選任懈怠の責を負うことになるであろうが,そういう趣旨であれば,言葉足らずであろう。