司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

「第三者のためにする契約に基づく所有権移転登記と司法書士職務上の留意事項」

2007-04-26 15:06:25 | 司法書士(改正不動産登記法等)
 月刊登記情報2007年5月号に、山野目章夫早稲田大学大学院法務研究科教授による解説「第三者のためにする契約に基づく所有権移転登記と司法書士職務上の留意事項」がある。

 「実体が甲から乙へ、そして乙から丙へ所有権が移転していると認められる事案において、これを甲・乙間の第三者のためにする契約に基づく所有権移転であるとして甲から丙への所有権移転登記をすることも許されるものではなく、そのような登記申請に情を知りつつ関与することは、司法書士など資格者代理人の品位に反するものと評価されなければならない。」とする七戸克彦論文(月報司法書士2007年3月号)を引用されているが、正しくそのとおりである。しかし、この点が最も懸念されるところでもある。

 実体が第三者のためにする契約であって、甲・乙間の代金支払が先行する場合には、登記識別情報及び登記委任状を白地のまま受領することになることが多いと思われるが、その補充についての委任、ないしは、その代行についての個別の授権を得ておかなければならない旨が述べられている。そのとおりである。

 「肝心であることとして、こうした複雑な問題があることの認識に立脚しながら、当事者、とりわけ丙に対し、所問取引形態の意味を十分に説明し、必要に応じ助言を与えることも、司法書士の職責として望まれるところである。」

 「当事者でない第三者から見ても、登記簿の資料的機能などの観点から、注意を払っておくべき問題がある・・・登記上の公示から甲の契約の相手方を誰何することができず、厳密に法律関係の履歴を確認したいと欲する第三者は、登記簿附属書類としての登記原因証明情報を参照して初めて乙の存在を知ることができる」という点は、留意すべきであろう。司法書士は、職務上確認すべき注意義務があるように思料する。

 結びは、「はたして、このようなものを取引界が受容するか、それを見届けるうえでも、資格者代理人である司法書士に期待される職責は大きい。」である。

 なお、同号の巻頭随筆「法窓一言」に、房村精一さいたま地方裁判所長(前法務省民事局長)が「実務家受難の時代」を寄せられており、そこでも「実務家として国民の期待に応え、新たな役割を適確に果たしていくためには、各人の絶えざる努力しかありません。」と結ばれている。

 「受難」であるとは思わないが、職責が年々重くなっているのは確かである。司法書士界を挙げての「絶えざる努力」で全うしてゆかねばなるまい。
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解散時等の譲渡承認機関の変更の取扱い

2007-04-26 13:38:11 | 会社法(改正商法等)
 月刊登記情報2007年5月号に「会社法施行後における商業登記実務の諸問題(4)」があり、その一として、「解散時等の譲渡承認機関の変更の取扱い」が取り上げられている。

 定款上、譲渡承認機関を取締役会と明示している会社において、取締役会設置会社の定めを廃止する場合、又、解散する場合には、株主総会においてそのような決議をするときに、併せて承認機関を変更する決議をも行う必要がある旨の解説があるが、
① 解散時における承認機関の変更の登記に関しては、既報のとおり、同時に申請しなくても却下はされない取扱いである。
cf. http://blog.goo.ne.jp/tks-naito/d/20070306
② 取締役会設置会社の定めを廃止する場合における承認機関の変更の登記に関しても、同様に、同時に申請しなくても却下はされない取扱いに変更された模様である。
 なお、いずれも懈怠の問題は生じるわけであるから、留意すべきである。

 また、会社法施行前において解散している株式会社について、「株式譲渡制限の承認機関が取締役会とされている場合は、監査役等の変更登記申請があった際に当該承認機関も変更することを要する」とする見解もあったところである。しかし、効力を停止していた定款規定が、会社法施行によりその効力を復活すると考えるのは妥当ではない(仮に復活させるとしても、当該株式会社の意思によるべきである。)。そのような取扱いを採るには、明文の規定を必要とすべきであり、明文の規定が置かれなかったにもかかわらず、当該定款規定の効力が復活したとして、「監査役等の変更登記申請があった際に当該承認機関も変更することを要する」という取扱いをすべきではない。この点に関して、標記解説では、整備法第108条の規定により、株式会社の清算に関する経過措置については「なお従前の例による」とされていることを根拠として、旧清算株式会社における株式譲渡制限に係る定款の定めの効力についても整備法第108条が適用され、変更の登記は不要であるとされている。苦しい論理であるが、効力復活は妥当でないので、やむなしであろうか。

 ただし、この立場を採るのであれば、解散時における承認機関の変更の登記の登録免許税に関しても、「清算に係る登記」(別表第一第24号(四)ニ)ということで、金6000円とする取扱いを採るべきであろう。
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株式会社への移行を条件とする特例有限会社を存続会社とする合併

2007-04-26 13:27:42 | 会社法(改正商法等)
 月刊登記情報2007年5月号に「会社法施行後における商業登記実務の諸問題(4)」があり、その一として、「株式会社への移行を条件とする特例有限会社を存続会社とする合併」が取り上げられている。

 会社法施行直後は、特例有限会社同士を合併させる吸収合併の官報公告が散見されたが、整備法第37条の規定により、このような合併は不可と解されていた。しかし、上記解説は、吸収合併の効力発生までに商号変更の効力が発生することを条件とするものであれば、可であるとしている。実務的には歓迎であろうか(それほどニーズがあるとは思われないが。)。

 ただし、「総会決議は、商号変更後に合併する旨の条件付決議であることを要する」とされている点や、吸収合併契約には「特例有限会社の商号及び通常の株式会社に変更後の商号を示す必要がある」点、さらに、公告・催告の内容として、「商号変更の効力発生が条件であることも併せて示す必要がある」とされている点は、留意すべきである。
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