月刊登記情報2007年5月号に、山野目章夫早稲田大学大学院法務研究科教授による解説「第三者のためにする契約に基づく所有権移転登記と司法書士職務上の留意事項」がある。
「実体が甲から乙へ、そして乙から丙へ所有権が移転していると認められる事案において、これを甲・乙間の第三者のためにする契約に基づく所有権移転であるとして甲から丙への所有権移転登記をすることも許されるものではなく、そのような登記申請に情を知りつつ関与することは、司法書士など資格者代理人の品位に反するものと評価されなければならない。」とする七戸克彦論文(月報司法書士2007年3月号)を引用されているが、正しくそのとおりである。しかし、この点が最も懸念されるところでもある。
実体が第三者のためにする契約であって、甲・乙間の代金支払が先行する場合には、登記識別情報及び登記委任状を白地のまま受領することになることが多いと思われるが、その補充についての委任、ないしは、その代行についての個別の授権を得ておかなければならない旨が述べられている。そのとおりである。
「肝心であることとして、こうした複雑な問題があることの認識に立脚しながら、当事者、とりわけ丙に対し、所問取引形態の意味を十分に説明し、必要に応じ助言を与えることも、司法書士の職責として望まれるところである。」
「当事者でない第三者から見ても、登記簿の資料的機能などの観点から、注意を払っておくべき問題がある・・・登記上の公示から甲の契約の相手方を誰何することができず、厳密に法律関係の履歴を確認したいと欲する第三者は、登記簿附属書類としての登記原因証明情報を参照して初めて乙の存在を知ることができる」という点は、留意すべきであろう。司法書士は、職務上確認すべき注意義務があるように思料する。
結びは、「はたして、このようなものを取引界が受容するか、それを見届けるうえでも、資格者代理人である司法書士に期待される職責は大きい。」である。
なお、同号の巻頭随筆「法窓一言」に、房村精一さいたま地方裁判所長(前法務省民事局長)が「実務家受難の時代」を寄せられており、そこでも「実務家として国民の期待に応え、新たな役割を適確に果たしていくためには、各人の絶えざる努力しかありません。」と結ばれている。
「受難」であるとは思わないが、職責が年々重くなっているのは確かである。司法書士界を挙げての「絶えざる努力」で全うしてゆかねばなるまい。
「実体が甲から乙へ、そして乙から丙へ所有権が移転していると認められる事案において、これを甲・乙間の第三者のためにする契約に基づく所有権移転であるとして甲から丙への所有権移転登記をすることも許されるものではなく、そのような登記申請に情を知りつつ関与することは、司法書士など資格者代理人の品位に反するものと評価されなければならない。」とする七戸克彦論文(月報司法書士2007年3月号)を引用されているが、正しくそのとおりである。しかし、この点が最も懸念されるところでもある。
実体が第三者のためにする契約であって、甲・乙間の代金支払が先行する場合には、登記識別情報及び登記委任状を白地のまま受領することになることが多いと思われるが、その補充についての委任、ないしは、その代行についての個別の授権を得ておかなければならない旨が述べられている。そのとおりである。
「肝心であることとして、こうした複雑な問題があることの認識に立脚しながら、当事者、とりわけ丙に対し、所問取引形態の意味を十分に説明し、必要に応じ助言を与えることも、司法書士の職責として望まれるところである。」
「当事者でない第三者から見ても、登記簿の資料的機能などの観点から、注意を払っておくべき問題がある・・・登記上の公示から甲の契約の相手方を誰何することができず、厳密に法律関係の履歴を確認したいと欲する第三者は、登記簿附属書類としての登記原因証明情報を参照して初めて乙の存在を知ることができる」という点は、留意すべきであろう。司法書士は、職務上確認すべき注意義務があるように思料する。
結びは、「はたして、このようなものを取引界が受容するか、それを見届けるうえでも、資格者代理人である司法書士に期待される職責は大きい。」である。
なお、同号の巻頭随筆「法窓一言」に、房村精一さいたま地方裁判所長(前法務省民事局長)が「実務家受難の時代」を寄せられており、そこでも「実務家として国民の期待に応え、新たな役割を適確に果たしていくためには、各人の絶えざる努力しかありません。」と結ばれている。
「受難」であるとは思わないが、職責が年々重くなっているのは確かである。司法書士界を挙げての「絶えざる努力」で全うしてゆかねばなるまい。