「心新たに研究に努力する」道を選択された方がいる
一昨日のことだ。私が敬愛してやまない研究者の方から、ご著書が送られてきた。いつも新著を刊行される度にお送りいただいているが、今回はいつもと異なり「ご挨拶状」が同封されていた。その文書には「26年間務めた大学を退職し、心新たに研究・教育に地道に努力する」と書いてあった。
私より5歳若いその方との出会いは、もう30年位も前になる。研究者のパートナーが、岡山にある大学を選んだことで、ご一緒に岡山の地に来られた。その際にご連絡をいただき、以来様々なことでお力をお借りし、ご助言をいただいてきた。私にとってはかけがえのない方で、その研究心にいつも励まされてきた。
この間の30年余の間に、その方は『性と生殖の近世』、『出産と身体の近世』(いずれも勁草書房刊)などの単著をはじめとして、研究の成果をたくさんの著書として上梓されている。研究以外の分野でも、様々な公的な委員などにもご就任される等、フィールドを広げられてご活躍されてきた。まさに研究者と呼ぶに相応しい方だ。
今回お送りいただいたご著書『江戸の捨て子たち その肖像』(吉川弘文館刊)の「あとがき」では、「この本を書いたことで、私は少し前に進むことができた。息長く研究を続けていくことへの勇気を持てた気がする」と書かれている。60歳を前にして、さらなる飛躍をめざしての決断を私はまぶしく見ている。そして、より豊かな今後の研究の成果を楽しみに待っている。
私は三年任期なので今年度末で退職するが、その最後に是非とも我が館で講義をしていただこうと一人で決めている。