週刊浅草「江戸っ子瓦版」 -のんびりHiGH句な日々-

文学と食とRUNの日々を、PHOTO5・7・5で綴るエッセイ♪

青いスタートライン in 茅ヶ崎

2017年07月22日 | ☆文学のこと☆


     「青いスタートライン」
       高田由紀子著  ふすい画
                ポプラ社刊 


【陽を浴びて海の神も夏休み】哲露


 夏真っ盛りである。

 早いもんで、海の日がきた。

 海の日の三連休におとなしく都会でうだっててはいけないのだ。


 




 上野駅から湘南ラインに乗り、一路茅ヶ崎へ。

 たった一時間。

 海好きのあっし、ビールも飲めるこの利便性に毎度感謝。 


 




 今年の海の日は、浜降祭の日でもある。

 相当数のお神輿が海に浸かり、禊をする。水の力、水の霊力によって御神威新たな神々を奉迎する神事とか。

 白装束を身に纏った茅ヶ崎の担ぎ手たち。

 夏の日差しにも負けず眩しい。

 とっても歴史あるお祭りなのよ。





 サザンビーチに打ち寄せる波の音。

 照りつける太陽の下のビール。

 波が強いから、ボディサーフィンだけでも楽しい。 

 潮騒に身を任せて、ボォーとしてるだけで癒される。




 同人の高田由紀子氏の新刊。

 平日に読み出したら海に行きたくなっちまった。

 読みかけを茅ヶ崎のビーチで読む。

 なんて贅沢な休日。

 そんなん思うのは俺だけか。

 秋の合宿で、この原型を生原稿で読んだ。 

 主人公は小学五年生の男の子で、都会っ子の颯太。

 妊婦のお母さんは体調を崩し、静養が必要という。

 夏休みを利用し、おばあちゃんが暮らす佐渡島へ旅する。 

 去年まで和気藹々と喋ってくれた、一学年上のあおいが妙によそよそしい。

 網戸から吹く風、真っ赤なスイカ、蜩の声。

 佐渡の夏に押されるように、ひょんな勢いで一キロの遠泳大会に臨む。

 心に傷を抱える夏生との出会いが、登場人物それぞれに微妙な変化をもたらす。

 よく喋り、良い子過ぎる颯太に違和感も憶えた。

 だが作者のキャラクターを思うと、なるほどこれも一つのリアルだと頷く。  

 忖度やら、裏側の空気まで察するようになった汚れちまったあっしには、

 眩し過ぎる佐渡の海である。

 直球ど真ん中の高田氏の作風が好感を持って読まれる世であってほしい。

 日本の正しい夏がここにある。 





 都会に戻り、元祖中村屋のチキンカレーを食す。

 戦時下の配給時、米の券を中村屋へ持っていくと、なんとカレーライスを振舞ってくれたという。

 お米も当時では信じられないほど美味しかったとか。

 幼い頃の記憶は増し増しだろうが、そんな追憶ならいくつあっても良い。 

 合宿で読んだ物語を、ここまで仕上げた作者の努力を想う。

 その真摯にたじたじとなりながら、心の中の海へ出かけたくなった。

 それにしても美しい絵だ。

 少年少女たちの若い記憶に、一人でも多く残って欲しい物語である。