今回の日曜美術館は、『明治の工芸知られざる超絶技巧』です。
私は、番組で紹介された素晴らしい明治工芸を見ていると、以前の展覧会『皇室の名品』で見たのと同じ感動を覚えました。

京都の清水寺に向かう参道の途中に、清水三年坂美術館があります。
展示されているのは、幕末から明治、大正にかけて作られた工芸品の数々です。

目を引くのは、細密を極めた職人の技です。

古びた瓦にとまる一羽の鳩が、蜘蛛を狙っています。
蜘蛛の大きさは、わずか8ミリです。
金工「古瓦鳩香炉」


七宝「蝶図瓢形花瓶」
高さ20センチほどの花瓶に施された見事な技です。


こういう職人たちを駆り立てたのは、激動する時代の空気でした。
明治維新を機に、西洋の文化が流れ込み、日本は近代化の波にさらされます。
そうしたなか、時の政府は新たな政策を打ち出します。
外貨獲得のため、日本独自の工芸品を海外に輸出しようと考えたのです。
甲冑や刀装金具などを造っていた金工師、和装から洋装という変化に影響を受けた繊維業など、社会の変化によって職を奪われた職人たちは、海外に活路を見出しました。

19世紀ウィーン万博などの博覧会に出品されるなど、日本の輸出産業品として海を渡ったのが そうした工芸品でした。

伝統的な日本の美とは少し異なった、緻密で繊細、超絶技巧を駆使 して作られ品々は、高い評価を受け、欧米人たちを驚かせました。
しかし、そうした多くの工芸品は、海外のコレクターの手に渡り、日本ではやがて忘れられた存在になっていきました。
それに再び光をあてるきっかけになったのが、清水三年坂美術館です。
海外のオークションにも参加し、1万点を越えるコレクションを収集したのです。
そのなかから、いくつか紹介します。
「竹の子、梅」象牙の作品です。


彫刻家の前原冬樹さんは、この素晴らしい作品に感激です。

前原さんの作品も紹介されました。


明治の作品に戻ります。
「蜂の巣」


竹の子や蜂の巣を作ったのは、同一人物で、安藤録山(明治18年頃~?)という方です。
でも詳しいことはほとんどわかっていないそうです。
「老人二童」石川光明
象牙を使った際密な作品です。

象牙に色をつける技法は、古くは正倉院の宝物に見られます。
象牙の小石です。
象牙を彫ってから模様を書く撥鏤(ばちる)という技法です。

安藤録山の「石榴」です。

柿やミカンの作品もあります。


今回は画像が多いので、次回に続きます。
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