田中川の生き物調査隊

平成12年3月発足。伊勢湾に注ぐ田中川流域の自然と生き物を調べ、知らせる活動をしています。三重県内の生き物も紹介します。

ツマグロコシボソハナアブ

2009-10-08 | ハエ目(双翅目)
ツマグロコシボソハナアブ
ハナアブ科のツマグロコシボソハナアブ雌 Allobaccha apicalis (Loew)

深夜、我が家の玄関灯へやつてきたツマグロコシボソハナアブ。
翅の斑紋が美しいので、ちょいと大人しくさせて鑑賞させてもらった。
美しく装っているものを愛でない手はない。
子供時代に美しい切手を集めていた。美しい翅を蒐集してみたいような気持ちになる。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると、
「体長9~14㎜。黒色で、♀は紫色、♂は青銅色の光沢を持つ。額は黒色で灰黄色粉がある。顔面は♂では黒色、♀では橙黄色で幅広い中縦線は黒色、側縁は白色粉を密布する。触角は橙黄色で上縁は暗褐色。肢は淡褐色で後脚の腿節の先端近くの輪と脛節の先端1/3は暗色。翅は♀では透明であるが前縁と末端のみ黒褐色、♂は全体が暗色に曇る。出現:6~10月。分布:本州・四国・九州・小笠原諸島・対馬・五島列島・男女群島;台湾・フィリピン・ジャワ・スマトラ。」

2009.10.1
ツマグロコシボソハナアブ

ホリカワクシヒゲガガンボが室内に

2009-08-27 | ハエ目(双翅目)
ホリカワクシヒゲガガンボ
ホリカワクシヒゲガガンボ Pselliophora bifascipennis Brunetti, 1911 

学名はCatalogue of the Craneflies of the Worldに拠ったが、数年前から Ctenophora (Pselliophora) bifascipennis (Brunetti, 1911) と紹介している人も居るが、調べた図鑑類にはこの種が載っていなかった。属名がどこかで変更されたようである。

夏の夜、私の部屋に侵入してきたガガンボは蛍光灯の周りをしばらく飛び回った後、パソコンやカーテンに止まった。翅長は約14ミリ。
このガガンボはお尻を持ち上げて、さほどふらつきもせず飛ぶ。翅を広げて飛んでいるようには見えなくて、ヘリコプターが飛んでいるような印象を持っている。こんな飛び方をするガガンボが他に居るのかどうか知らないが、子供時分から見ているような記憶がある。

探した図鑑には載っていなかったので、ネット検索した。翅脈の斑紋と触角が特徴的なところからホリカワクシヒゲガガンボの♂と思える。

ある画像掲示板でDipterophilus と名乗る人が「ベッコウガガンボに近縁のホリカワクシヒゲガガンボ」について次のようにコメントしていた。
「幼虫は腐葉土中などに生息しており,暖地に多い種で,市街地などにも時々現われます.この仲間はみな櫛歯状の触角に特徴があります.雌では腹の先が細く尖った産卵器に変化していて,これを使って腐葉土中に産卵します.幼虫は腐葉土を食べて生長します.クシヒゲガガンボ類の多くは朽木に穿孔して,これを食べます.」

体色には変異があるようで、脚の色まで赤っぽい個体も居るようだ。きっと美しいに違いないから会いたいと思う。

Catalogue of the Craneflies of the Worldによると、分布は「Russia: FE (Primorskiy kray); North Korea, South Korea, Japan (Honshu, Kyushu), China (east);; China (as far south as Guangdong).」 なお、FEは極東、Guangdongは広東省。
また、科はガガンボ科 Tipulidae、亜科は クシヒゲガガンボ亜科Ctenophorinae としている。

なお、『日本産水生昆虫―科・属・種への検索』ではPselliophora属及びクシヒゲガガンボ属Ctenophoraともにガガンボ亜科Tipulinaeとしていて、クシヒゲガガンボ亜科なんて載せていない。同書によると、触角の鞭小節を属検索のポイントとしており、4本の突起がほぼ同じ長さだとPselliophora属、先端近くの2本の突起が基部の2本より短いものをCtenophora属としている。

2009.8.25
ホリカワクシヒゲガガンボ

ホリカワクシヒゲガガンボ

ホリカワクシヒゲガガンボ

追記
松村松年が1916年に,長崎の堀川佐市氏から送られてきた標本をもとに記載した新日本千虫図解巻之二には,和名をホリカワクシヒゲガガンボ,学名をDictenidia Horikawae Mats.とし,「翅は暗色不透明,翅底の4分の1,中央にてやや横帯をなせる3紋列ならびに後縁の中央にある1紋は鼈甲様の黄色」などとある.当時の分布は九州長崎とし,「稀なるが如し」と結んでいる.

野登山のガガンボはTipula属の1種

2009-07-31 | ハエ目(双翅目)
Tipula属の1種
野登山の標高800メートルほどの所で、灯火採集を行った。亀山市と鈴鹿市の境付近だが、採集場所は鈴鹿市内に入る。
21時頃にガガンボが交尾しながら明かりにやってきた。雄の翅長は13ミリ、雌の翅長は15ミリ。

手持ちの図鑑に載っていないし、ネットを調べても判らないので、研究者にお尋ねした。
アノニモミイアと名乗る人が「まず間違いなくTipula属の1種ですが、カスリガガンボなどに一見翅の斑紋が類似していますが、透明斑の位置が異なっています。Tipula属にはおびただしい種が含まれていますので、あるいは未知の種かもしれません。顕著な斑紋をもっていても、交尾器の構造が異なる近似種が多数あるのがこの仲間です。
今のところ、カスリガガンボに翅斑が類似したTipula属(キリウジガガンボ属)の1種と言うところでしょう。」と教えてくれた。

次に達磨と名乗る人が「先生のご指摘のとおり、多数の種がいるので答えに窮するのです。
この写真のガガンボはTipula strix Alexander, 1918によく似ていますが、翅の模様は全くちがうので、この種の近縁種としておいて頂くのがよいかと思います。strixは図示されたことがなく、亜属の所属も不明とされるガガンボなのですが、愛媛大学にAlexander同定の標本が保存されています。この種もご他聞にもれず、近縁な未記載種(?)がいくつも見つかっていて、一度タイプ標本を見ないとどれが本当のstrixだか判断しかねます(発見時、雌個体を元に記載されました)。」と教えてくれた。

要するに、ガガンボの研究者でさえも見たことも無いガガンボのようである。これだけ特徴のある翅の模様を持っているガガンボなのに、既知の種に当てはまるものが無いようである。

この日、ガガンボは私しか採集していないので、このTipula属の1種ペアーを標本にした。何時の日か、種名が明らかになるときが来るのであろうか。
2009.7.18

Tipula属の1種
Tipula属の1種♂

Tipula属の1種
Tipula属の1種♀

Tipula属の1種
Tipula属の1種♀

柿の木からガガンボが

2009-07-25 | ハエ目(双翅目)
Libnotes puella
ヒメガガンボ科ヒメガガンボ亜科のLibnotes (Libnotes) puella Alexander, 1925 和名は未だ無い。

庭の柿の木にイラガ幼虫が発生したので、殺虫剤を散布した。しばらくすると、イラガの幼虫がボタボタと落ちてきた。
そして、このガガンボも落ちてきた。翅長は約9ミリ。
翅の斑紋からナミガタガガンボではないかと思われるが、ナミガタガガンボの翅長は13~15㎜なので、どうもおかしい。翅の斑紋も良く見ると違っている。

研究者にお尋ねすると、達磨と名乗る人が次のように教えてくれた。
「ウスナミガタガガンボやカンキツヒメガガンボなどの属するLibnotes属の一種には違いありません。
家の標本と見比べて見ますと、九州や沖縄から記録のあるLibnotes puella Alexander, 1924と同じもののように思えます。Libnotes属のガガンボは夜、カブトムシを探しに行くと、しみだした樹液の近くの樹幹で体を震わせているのを見ることができます。」

Catalogue of the Craneflies of the Worldによると、Libnotes (Libnotes) puella の分布は日本だけで、九州、南西諸島(=琉球)。そして、我が家のある本州(三重県)が新たな生息地として知られることとなる。
記載年の違いはどちらが正しいのか分からない。

私の掌の上で亡くなったので、標本にすることにした。
2009.7.10

Libnotes puella

Libnotes puella

イシハラクシヒゲガガンボが灯火に

2009-07-22 | ハエ目(双翅目)
イシハラクシヒゲガガンボ
ガガンボ科Ctenophorinae亜科Cnemoncosis亜属の イシハラクシヒゲガガンボ Ctenophora (Cnemoncosis) ishiharai Alexander, 1953

野登山の標高800メートルほどの所で灯火採集を行った。21時頃に、このガガンボが現れた。
体長は約15ミリ、翅長は約13ミリ。イシハラクシヒゲガガンボではないかと思うが、既知の情報が極めて少ない。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲには、スネブトクシヒゲガガンボに似るが「♂の後脚脛節は膨大しない」との記述がある。また、「クシヒゲガガンボの類は♂の触角が櫛歯状で顕著であるが、♀では触角はほとんど糸状をなす。」とある。なお、同図鑑では
スネブトクシヒゲガガンボをCnemoncosis亜属としているので、イシハラクシヒゲガガンボも同じ亜属に属するものと思う。
参考までに、イシハラクシヒゲガガンボに似ているというスネブトクシヒゲガガンボとは、同図鑑によると、「体長16~19㎜。翅長15~17㎜。翅の斑紋と後脚脛節が♂では膨大することが特徴である。胸部背面はほとんど黒色。側面は黄色斑が存在する。触角は黒色だが、柄節のみ黄色。顔も黄色である。」

Catalogue of the Craneflies of the Worldによると、分布は本州、四国、九州の日本だけとなっている。また、亜科はCtenophorinaeとしている。

2009.7.18
イシハラクシヒゲガガンボ

灯火にセダカヒメガガンボ

2009-07-18 | ハエ目(双翅目)
セダカヒメガガンボ
ガガンボ科のLimoniinae ヒメガガンボ亜科 Eriopterini族 セダカヒメガガンボ Conosia irrorata irrorata (Wiedemann, 1828)

玄関の灯火にやってきて、我が家で死亡したこのガガンボは翅の斑紋からセダカヒメガガンボと思われる。体長は16㎜、翅長は9mm。全身が地味なチョコレート色をしている。
手持ちの図鑑にはどれも載っていなかった。
セダカガガンボの名で石川県では秋期に採集されている。福井県、京都府にも記録がある。そして、ここ三重県では7月に現れた。
画像検索では1個の画像しか見つからなかった。その1個からセダカガガンボではと判断したが、後日、県立図書館にて『日本産水生昆虫検索図説』を見ると、セダカガガンボではなく、セダカヒメガガンボの和名で載っていた。それによると、「体長11~16㎜。全身黄褐色。翅には細かな斑点模様があり、A1脈の先端で翅の後縁は後方に張り出す。セダカヒメガガンボ属では本種1種だけが日本に分布する。」とある。

Catalogue of the Craneflies of the Worldという外国のサイトで調べたら、セダカヒメガガンボの分布は次のとおりであった。
Egypt; Israel, Kuwait, Saudi Arabia;; Afghanistan; North Korea, South Korea, Japan, China;; widespread Afrotropical (incl. Angola (incl. Cabinda), Central African Rep., Chad, Congo (Dem. Rep., former Zaire), Congo (Peoples Rep.), Ethiopia, Kenya, Liberia, Madagascar, Malawi, Mozambique, Nigeria, South Africa, Uganda, Zimbabwe);; China (incl. Hainan), India, Indonesia (incl. Mentawai Is), Malaysia (Penins., Borneo: Sarawak, Sabah), Nepal, Philippines (Luzon), Sri Lanka, Taiwan, Thailand;; Australia (Qld, NSW), ?Fiji, Indonesia (Maluku, Papua Indonesia [= Irian Jaya]), Papua New Guinea (Bismarck Arch, Papua New Guinea).

1828年に記載された種であり、世界の各地に分布しているにもかかわらず、なんて情報が少ないことか。
2009.7.16

セダカヒメガガンボ

砂浜のヤドリバエ

2009-07-14 | ハエ目(双翅目)
ヤドリバエ科
体長は15㎜近くあったかも。津市の豊津海岸で、ハマゴウの葉に止まったヤドリバエ科のハエを見つけた。
ヤドリバエ科のハエなんて、図鑑にもあまり載っていない。

研究者に尋ねてみると、三枝豊平先生から
「かなり特徴があるようなヤドリバエですが、手元の図鑑類をみても該当するようなものはありません。舘博士にお尋ねしたところ写真では詳細が分からないが、Phyllomyiaの可能性があるとのことでした。このほかにこのような体形でCylindromyia属があります。

いずれにしても、よほど特徴的な普通種でない限り、ヤドリバエ科については属そのものの検索さえも写真では困難ないし不可能でしょう。ましてや種まではとても行き着きません。標本に基づく属の検索にしても、双翅類分類学者でさえもヤドリバエ科以外の専門家では、検索表を引くこと自体がかなり難しいものです。私にもヤドリバエはさっぱりわかりません。お手上げです。」とコメントをいただいた。

素人眼には特徴的なハエと思えても、写真による同定となるとヤドリバエ科の分類学者でさえ属名の可能性を言える程度。似たものがたくさん居るということか。

その後これを見つけた場所の近く、コウボウシバやチガヤ、ケカモノハシなどが生えている砂浜で何度もこのヤドリバエの姿を見かけた。
2009.7.4

ヤドリバエ科

砂浜のダイズコンリュウバエ

2009-07-13 | ハエ目(双翅目)
ダイズコンリュウバエ
ヒロクチバエ科のダイズコンリュウバエ Rivellia apicalis Hendel

近頃、津市の白塚海岸に何度も通っている。
砂浜のアツバキミガヨランの葉にダイズコンリュウバエを見つけた。水平に開いた翅を盛んに震わせていた。
体長5.5~6ミリ、翅長4.5~5ミリ。
翅は透明で翅脈は黄褐色。前縁部はやや黄色を帯びる。翅頂にはR4+5脈を中心に二室に渡って黒褐色の斑紋がある。口孔はすこぶる大形で口吻は太い。幼虫はダイズなどの根瘤を食害する。
2009.7.11

ダイズコンリュウバエ

アシナガキンバエ

2009-07-08 | ハエ目(双翅目)
アシナガキンバエ
アシナガバエ科のアシナガキンバエ Dolichopus nitidus

干潟に育つハマボウの葉上をあちこち飛び移るアシナガキンバエを見つけた。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると、「体長5~6㎜。胸背は幅より長く、微かに灰粉を装う。M1+2は分岐せず、中央で直角に曲がり、R4+5脈と平行に走る。中脛節の先端には5棘毛を、また後脚第1付節には背棘毛を生ずる。♂の生殖器は甚だ大きい。」

一度、雄を捕まえて確認しなければと思っている。
2009.7.4

アシナガキンバエ

シマアシブトハナアブ♂

2009-07-07 | ハエ目(双翅目)
シマアシブトハナアブ♂
ハナアブ科のシマアシブトハナアブ Mesembrius flavipes (Matsumura, 1905)

津市河芸町東千里。目の前は干潟が消えてマリーナが出来ている。60年前はその干潟に塩田があったと聞いている。かつては砂浜だったところに畑があり、人家も建つ。耕作を放置した土地にアイアシとオカトラノオが群生している。
オカトラノオの白い花から花へと慌ただしく飛び回るシマアシブトハナアブ♂を見つけた。

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると、シマアシブトハナアブは「体長10~11mm。触角は黒褐色。胸背の縦線は灰色粉よりなり、中央の黒色部は小盾板前に明瞭には達しない。後脚の腿節は肥厚せず脛節は黒褐色。出現:4~8月。」

体色が黒っぽい黒化型も居るそうだ。
2009.7.4

シマアシブトハナアブ♂

シマアシブトハナアブ♂
♂の複眼は1点で接合する。

キンアリノスアブ♀

2009-07-02 | ハエ目(双翅目)
キンアリノスアブ♀
ハナアブ科のキンアリノスアブ Microdon auricomus nigripes Shiraki,1930

野登山の標高800メートル付近。山道で金色のハナアブを見つけた。
日陰で撮った写真と陽が当たったときの写真とは別種かと思うくらい印象が異なった。
ハナアブとは思ったが、何ハナアブかは判らなかったので、ある画像掲示板でお尋ねした。

pakenyaと名乗る方から「写真のアブはハナアブの仲間で、Microdon auricomus キンアリノスアブのメスです。よく似た種にM. oitanus トゲアリノスアブがあり、西日本には両種とも普通に生息しています。色調や全形などはきわめて紛らわしいのですが、トゲは少し大きく、小楯板の後縁に1対の顕著なトゲがあり(長い被毛に隠れて見づらいですが)、胸背の毛が濃いなどのちがいで区別します」と教えてもらえた。

原色日本昆虫図鑑(下)によると、アブバエ科のキンアリスアブバエ(キンアリスアブ)Microdon auricomus Coquillettは「体長10~12mm、翅長8~10mm。体の地色は青藍色で光沢があり、淡黄褐色の長毛を密生する。触角は長く黒色。顔面には淡黄色毛を密生する。小楯板は褐色で黄色長毛を密生する。あしは黒褐色で末端にちかづくにつれて黄色味をおびる。翅はやや小さく全体にすす色をおびる。腹部は太く後半部の光沢にはやや銅色をおびる。幼虫はアリの巣の中に寄食して生育する。分布:本州・九州。」

新訂原色昆虫大図鑑Ⅲによると、キンアリノスアブはハナアブ科に属し、トゲアリノスアブに似るが次の点で異なるという。「小型。胸背の被毛は少なく青銅色の光沢が強い。小盾板には棘はない。脚の脛節外側には顕著な淡褐色毛はなく、♀の前中腿節の基部1/2を除く他の部分は赤褐色。」
なお、同図鑑では学名をMicrodon auricomus migripes Shirakiとしているが、Microdon auricomus nigripes Shirakiが正しいと思われる。

2009.6.28
キンアリノスアブ♀

キンアリノスアブ♀

山地のゴマフアブ改めアカバゴマフアブ

2009-06-29 | ハエ目(双翅目)
ゴマフアブ
鈴鹿と亀山にまたがる野登山へ仲間と昆虫採集に出かけた。
山頂付近に車を止めたが、真っ先に姿を現した虫はこのアブであった。このアブはしきりと車のボディに止まった。
3枚の写真には別個体も含まれている。

ゴマフアブ属は互いに良く似ていて、今一自信は無いが、たぶんゴマフアブ Haematopota pluvialis tristis Bigot だと思う。

日本では北海道と本州に分布する。体長8~12mm。触角第3節は黄褐色の基環節基部をのぞいて黒色。翅の透明斑は他種より大きい。(新訂原色昆虫大図鑑Ⅲより)

原色日本昆虫図鑑(下)には「胸部背面には灰色粉からなる細い5縦条がある。あしは黒褐色で各脛節には黄赤色の2環紋があり、ふ節の基部も同色。翅はすす色で半透明の網目状紋があり、前縁中央よりやや外方にある縁紋は黒色。」とあるが、
5縦条については確認できていない。

とある害虫関係のサイトに「成虫は7月から9月にかけて現れ、本州においては主として山地で、日中も夕方も激しく人やウシ、ウマを襲って吸血活動をおこないます。」とあった。

半袖姿の一人が「やられた」と言った。
2009.6.28

ゴマフアブだと当時は思っていたが,あらためて手持ちの標本を調べてみると三重県内各所で採集したゴマフアブ属は全てアカバゴマフアブHaematopota rufipennis Bigotであった.触角第1節の先端近くに切れ込みがないのでゴマフアブではない.小楯板は灰白色で,額側斑は円状で,額央斑はやや大きく黒色三角状であるので,写真の個体はアカバゴマフアブである.アカバゴマフアブの分布は本州,四国,九州であり,ゴマフアブの分布は北海道と本州(東北地方);樺太,シベリアである.
同定資料がそろってきたので,ようやく判ってきた.2014.12追記

ゴマフアブ
アカバゴマフアブ

ゴマフアブ
アカバゴマフアブ

砂浜のハマベコムシヒキ

2009-06-25 | ハエ目(双翅目)
ハマベコムシヒキ
2009.6.23 ムシヒキアブ科のハマベコムシヒキ Stichopogon infuscatus Bezzi, 1910

津市河芸町の芦原海岸でハネボシスナニクバエの観察をしていたら、同じくらいの大きさで白っぽい感じのハエが動いているのが眼に入った。初めて見るハエだ。砂浜にひざまづいて彼らの動きを追いかけた。
ハエはハマベコムシヒキと判った。
ハマベと名の付くものがあると、私は浜辺に住んでいる人間だから当然出会えるもんだという気がしている。ハマベコムシヒキも以前から会いたいと思っていたハエなのではあるが、手持ちの図鑑には載っていない。ネット検索しても和名では画像が出てこない。とにかく小さなムシヒキアブという程度のイメージしか持っていなかった。
やっと会えた。
人に会いたいという気持ちはだんだん薄らいできているが、見たことの無い生き物との出会いは期待している。

三重県のレッドデータブックでは情報不足、京都府では要注目種としている。
自然状態の残る砂浜海岸に広く分布しているようで、典型的な海浜性の種。環境指標性が高い。身体は灰白色で、腹部背面に黒色の斑紋がある。体長は6mmくらい。
こんなに小さいにもかかわらず、ムシヒキアブなのであるから、生きて動いている虫たちを襲って、捕らえて体液を吸っているものと思われる。直翅目の幼虫やクモ類を捕らえた目撃情報もある。

type localityは台湾産。日本では鹿児島県市木町、鹿児島市谷山、鹿児島県佐多町大泊、鹿児島県鹿屋市、佐賀県唐津市虹ノ松原など九州の各地に生息しているとされていたが、その後、兵庫県淡路島南部の海岸と兵庫県北部から鳥取県にかけての海岸、鳥取砂丘、徳島県の吉野川河口、信濃川、神奈川県、茨城県と次から次へと生息が確認されてきている。石狩市の石狩川河口でも見つかっているようだ。
ハエ屋さんたちに人気があるのか、「はなあぶ」という機関紙に盛んに登場している。
三重県内では鼓ケ浦海岸で採集されている。『鈴鹿市の自然』によると「小型のムシヒキアブで、海浜性。最近本州から記録された種で自然度の高い環境に見られるが個体数は比較的多い。」
町屋海岸での生息も確認されていたように記憶している。

ハマベコムシヒキに関する文献は、
Nagatomi, A. 1983. The Japanese Stichopogon (Diptera, Asilidae). Kontyu, 51(3):474-486
Ohishi, H. 2002. Stichopogon infuscatus Bezzi new to Kyoto, Japan (Diptera: Asilidae). –Hana abu 13: 37 [Japanese].
Satou, N. 2005. Photographic report on Stichopogon infuscatus Bezzi. – Hana abu 19: 47-49,cover [Japanese].
Ichige, K. 2005. Stichopogon infuscatus Bezzi new to Ibaraki Pref. Japan. – Hana abu 19: 22 [Japanese].
脇 一郎.2006.ハマベコムシヒキを神奈川県で採集.はなあぶ 22: 80

ハマベコムシヒキ
2009.6.24

ハマベコムシヒキ
2009.6.24

ハマベコムシヒキの生息する芦原海岸
ハマベコムシヒキの生息する芦原海岸 海浜植物が疎らに生えている。


2009.7.6 豊津海岸でヨコバイの仲間を捕らえたハマベコムシヒキ

キモグリバエ科のFormosina cincta その後

2009-06-21 | ハエ目(双翅目)
Formosina cincta
2009.6.14 芦原海岸のコマツヨイグサにて Formosina cincta

Formosina cincta
2009.6.14 芦原海岸のコマツヨイグサにて Formosina cincta

昨年の9月に海辺のセイバンモロコシ群落で見つけたキモグリバエ科のFormosina cincta が、この6月中旬から、津市河芸町のあちこちの海岸で見つかっている。
アリジゴクを探して、コウボウムギやハマボウフウ、コマツヨイグサなどの植生がある砂浜をうろついていると、目の前にこの黄色いハエが現れることが度々あった。
セイバンモロコシ群落の辺りでは未だ見ていないが、海辺のマサキの木やネムノキでは見かけた。
ネムノキは何株も生えているが、ある一株だけで見られ、しかも数十匹もの集団でいた。その後、そのネムノキを何度か訪ねたが、彼らの姿は無かった。

Formosina cincta DE Meijereの特徴は、1978年に発表された上宮博士の論文によると
Frons very broad, about 0.4×as wide as head; frontal triangle shining reddish yellow and broad, with apex extending broadly to anterior margin of frons; mesonotum broadly shining yellow from humeral callus to notopleura1 area; scutellum entirely yellow; r-m basad from middle of discal cell.
また、分布はJapan (Amami Is.); Taiwan, Sinabang

本州初のキモグリバエ科

Formosina cincta
2009.6.17 豊津海岸のネムノキにて

Formosina cincta
2009.6.17 豊津海岸のマサキの蕾にて Formosina cincta

Formosina cincta
2009.6.17 豊津海岸のマサキの葉にて Formosina cincta

砂浜のハネボシスナニクバエ

2009-06-18 | ハエ目(双翅目)
ハネボシスナニクバエ♂
ニクバエ科のハネボシスナニクバエ Phylloteles formosana (Townsend.1933)

芦原海岸のハマボウフウの花で出会ったハエ。
翅に斑紋があったので調べる気になった。

ハネボシスナニクバエの♂の翅には紋があり、触角第3節の端刺(arista)が幅広い。♀は翅の紋や触覚刺毛の肥大を欠き、同定は難しいが、♂と頭部を比べると同様のシルエットをしているので、他種と区別できるという。
5月から8月にかけて砂浜や海岸、河岸などの砂地の植生で見られるものらしい。
日本、ロ極東、中国、モンゴル に分布する。九州や四国でも見つかっているようだ。
図鑑類を調べたが、どれにも載っていなかった。あるハエ屋さんのホームページだけには詳しく紹介してあったので参考にした。
2009.6.17

ハネボシスナニクバエ♂

ハネボシスナニクバエ♂