
◼️「ホット・ロック/The Hot Rock」(1972年・アメリカ)
監督=ピーター・イエーツ
主演=ロバート・レッドフォード ジョージ・シーガル ロン・リーブマン ポール・サンド
ロバート・レッドフォードの引退作「さらば愛しきアウトロー」が昔からの映画ファンにグッとくるのは、「明日に向かって撃て!」のサンダンス・キッドや「スティング」、この「ホット・ロック」などで数々の犯罪者を演じてきたからだ。でもレッドフォードが演じた美男の犯罪者は、根っからの悪党でもなく、人情やユーモアがあって仲間思いで憎めない。「ホット・ロック」ではスゴ腕なんだろうけれど、胃潰瘍の一歩手前で薬飲んでるキャラクターが身近な人間味を感じさせて好感。
「ホット・ロック」で演じた主人公は出所したばかりの盗みのプロフェッショナル。錠前破りである義理の弟から、ブルックリンの美術館に収められたダイヤモンド"サハラの石"を盗み出す仕事を持ちかけられる。警備員に化けて忍び込んだが、仲間の一人が捕まってしまう。彼は捕まる前にダイヤを飲み込み、留置された警察署に隠した。彼らはヘリコプターで警察署に乗り込むが…。
スマートに盗みが実行されたかと思えば、思わぬ事態で危機に陥り、ダイヤの行方をめぐって、ストーリーは二転三転。厳重に警備された貸金庫に預けられたダイヤにいかに近づくかが、クライマックスの見どころとなる。地下を掘り進むでもなく、変装するでもなく、まさかの催眠術😵💫を使うのが楽しい。この軽妙さで映画の好きずきが分かれるところかもしれない。でも"アフガニスタンバナナフロント"って呪文のおかしな響きがなーんか楽しくって僕は許せてしまう。
ラストシーンにつながる銀行を出てニューヨークの街をレッドフォードが一人歩く場面。それまで地味だったクインシー・ジョーンズの音楽が、少しずつ華やかになっていく。主人公がジワジワと高揚感を感じていく様子。歩くだけの演技に音楽が彩りを与える。劇伴のお手本と言ってもいい場面。
2001年の同時多発テロで崩れ去る世界貿易センターのツインタワーが、まだ建設中の建物として撮影されているのは貴重な映像。