羽を休める鳥のように

きっとまた訪れる薄紫の夕暮れを待ちながら

わかれ

2010年05月28日 | Weblog
「また台風がくるらしいという
今度の遠足もまただめらしい
鬼のいない間の僕らの青春
僕のいのちも長くはなさそうだ」

こうして「わかれ」という詩は始まる。
片桐ユズルさんの詩集はすっかり色あせているけれど、
萩原朔太郎や、三好達治の詩集と並んで本棚でわたしを待っている。
詩集をひらくときは古い引き出しを開けるときに似ている。
たいていは何かを、探しているのだ。

わたしが学生の頃読んで好きだった詩を書き出して、
娘の誕生日に添えたことがあった。
受験生だった彼女は、文字通りその紙片を机の引き出しに入れて、
今も、時々読み返すという。

「ふつうの女の子に」という詩。

ひとり たたかうしかない たたかいなんだね
あなたが そこまで おもいつめたとは
あなたの こどくが ぼくのみにしみる

ボストンバッグに きものをつめて
退学とどけ と 片道キップ
ひとり たたかうしかない たたかいなんだね

ぼくは あなたに なにもしてあげられない
ぼくには かねもなく コネもない
あなたの こどくが ぼくのみにしみる

ただ がんばれと 声をかけるだけ
ただ 花束と キスをおくるだけ
ひとり たたかうしかない たたかいなんだね

  (後略)


この詩を読んだのはちょうど今の娘くらいの頃だったろうか。
ときをこえて、言葉はたしかな力をもつ。
きっと静かに眠っているように見えるだけなのだ。

ふと思いついて片桐ユズルさんを検索してみた。
詩集の裏表紙の写真はギターを抱えた青年だった。
面影をそのまま残して、ご活躍中。
SPYSEE(スパイシー)の相関図では、中川五郎さんや高田渡さんと、
つながっていた。

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