羽を休める鳥のように

きっとまた訪れる薄紫の夕暮れを待ちながら

猫の絵本

2016年04月05日 | Weblog
ホームに着いたのはお昼もだいぶ過ぎた頃だった。
(昼食時に行かないように図書館で時間を調整したのだ)

前来た時よりもまた体の傾きが大きくなり
リビングの椅子に不自然な姿勢で座っている母がいた。
スタッフがすぐにわたしに気がついた。
「今日はかなりご機嫌がよくないです。介助しようとしても怒って払いのけます。」
「すみません。お世話になります。」と頭を下げる。

二階の皆さんは全員で食後のテレビ。
母ともうお一人の食器だけがまだ片付いていない。
足元にはすごい量の食べこぼし。
それでも母はわたしの顔を見ると嬉しい。笑顔をみせる。
食器の片づけにも承諾しスタッフが食べこぼしを掃除しわたしが手を拭く。

隣りに最近入居された方が座っている。
大切そうにハンドバッグを抱えている。
こんにちは、と声をかけるとこんにちはと穏やかに返る。
ここへきた当初の母のようだ。
その方がバッグの中から一枚の写真を取り出して見せてくれた。
「いい写真ですね」というと満足そうにうなずく。最近のここでのスナップだ。

わたしは老人を子ども扱いしてはならない、とつよく思っていた。
プライドを尊重しようと思っていた。
ただ、以前にここにあった猫の写真集を母と一緒に広げたら喜んでくれたし
会話もとんちんかんな今、また一緒に猫でも見ようと猫の絵本を借りてきた。
三鷹の講座でお会いしたことのある「どいかや」さんの本。
母は「かわいいかわいい」と言って楽しんでくれた。
しかも絵本の字が読める。カタカナもひらがなも読む。

たくさんのことができなくなり
スタッフを困らせ厄介な存在になりつつあると思っていたが
まだこれほどの能力があるのだ、としみじみと思った。

そういえば以前猫の写真集を広げて楽しんでいたとき
「わたしが帰ってからまたがくんと反動がくるかな」と親しいホーム長に言ったら
「いいの、それはこちらで何とかする、Sさんと過ごすこの時が宝物だから」と言ってくれた。
ここへ来て良かった、と感じた瞬間だった。

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