何かをすれば何かが変わる

すぐに結論なんて出なくていい、でも考え続ける。流され続けていくのではなくて。
そして行動を起こし、何かを生み出す。

待ち時間革命

2010-05-25 21:46:18 | ISO9001奥が深いか浅いのか
「待ち時間革命」 前田泉・著、日本評論社、2010年4月25日

p.10 医療機関は診療報酬を増やすことにつながることには行動を起こすが、患者の利便性のような直接診療報酬を増やすことにつながらないことに対してはこれまでほとんどなにもしてこなかった。

p.25 村上和雄氏は、「科学には表と裏の2面があります。表は客観的観測や論理で成立しているデイ・サイエンスと呼び、裏は直感や“自分はこう思う”といった科学者の熱い思い、感性などをナイト・サイエンスと呼びます。科学にはこの直感や主観、科学者の熱い思いがとても重要で、大発見の芽はすべてナイト・サイエンスから生まれています。なぜなら大発見は、常識や理性を越えなければならないからです」と述べている。

p.26-7 精神科医の春日武彦氏は、援助者の資質として「中途半端なところで時間が経過するのを我慢できるか?」「判断を留保したままで我慢できるのか?」をあげ、「中腰力」と呼んでいる。

p.43 自分の意志によって「遠回りをする」「わざわざ時間をかけて旅をする」「待つ」と言った行為を選ぶとその時間に価値が生まれる。自らの意志で待つ時間は価値を生み、意志に反して待たされる時間はむだになるのである。待つ時間か待たされる時間かがわかれるのは、待つという時間に自分の意志がどうかかわったかがカギのようである。

p.46 医療機関が受ける苦情・クレームの第1位は、待ち時間の長さに対してであるが、医療機関が「待ち時間」ゼロを目指すことが患者を呼び込むことになるわけではない。ある程度の待ち時間は医療技術の高さに対する安心感を与えるという調査結果だ。

p.53 米国の医療経済学者ドナベディアンは、医療の質を「構造:Structure」「過程:Process」「結果:Outcome」の3つの枠組みによって測ることを提唱した。

p.54 患者が評価した総合満足度への影響因子を調べてみると、「医師に関する満足度」がもっとも強く影響し、2番目が、「自覚症状の改善や病気に対する不安や悩みの軽減」であり、「受付」「看護師」「待ち時間」は優位に影響を与えるものではあるが、その影響力の強さは限定的であった。
 医療側が総合満足度を改善しようとするときには、待ち時間の問題よりも、医師と患者のコミュニケーションを充実させることにより注意を払うべきでありということである。

p.55 改善の優先順位でいえば明らかに医師と患者のコミュニケーションにあるということを認識していただきたい。つまり間違っても待ち時間解消のために医師とのコミュニケーションを犠牲にするようなことがあってはならないのである。

p.57 開業したての頃にはゆったりと診察できたのに、評判がよくなって患者が増えたために、診察時間が短くならざるをえなくなる。この場合こそ、短い診察時間のなかでも患者に「よく聴いてくれた」「わかりやすい説明だった」という評価を得られる面談スキルの向上が求められる。これは、クリニックの成長とともに乗り越えなければならない壁である。

p.57-8 つまり待ち時間に対する不満は、総合満足度への主要な影響因子である「医師の態度や対応」が満たされた後に出てくる不満であると解釈することができる。
 マーケティングでは、総合評価の中心的な要素のことを本質サービス(機能)と呼び、この場合、「医師の態度や対応」が該当する。また総合評価への影響は少ないが、ある程度重要な要素を表層サービス(機能)と呼んで、この間合いは「待ち時間」があてはまる。一般的に市場が成熟する過程においては、まずは本質サービスで争われ、本質サービスに差がない状態になると、その後、表層サービスの差別化へ移行していく。

p.62 多少待ってでもコストを負担せずによい先生に診てもらいたいのである。患者は待ち時間「ゼロ」を求めているわけではないのである。

p.67 「受付時におおよその待ち時間の長さを知らせてもらうことで、待つ覚悟をさせてほしい」。これが患者の抱いている本音なのではなかろうか。

p.78 われわれの調査では、多くの人が「待ち時間」を「むだ」「苦痛」ととらえているものの、「ふだん読めない本や雑誌が読める時間」「考えごとをする時間」「ほっと一息つく時間」という肯定的な捉え方をする人もすくなからずみられた。

p.87 待ち時間の短縮は、患者満足度の中心をなす医師とのコミュニケーションとトレードオフの関係にあり、待ち時間を短くすることはある程度可能かもしれないが、コミュニケーション時間を短縮しなければならないことになる。

p.105-6 病院か、診療所か、予約制での受診か、飛び込み受診かにかかわらず、必要な基本的対応は、
 ①受付したときにどれくらいの待ち時間になるか伝える
 ②待っているさいに、順番が変わったり、受付時に案内した時間より大きくずれる場合にはきめこまかに声かけする
 である。この2つの対応はどのシステムを運用する場合でも絶対にはずせない。

p.130 富永氏は、「ほとんどすべての医療機関において、外来に来た患者さんやご家族がもっとも長く過ごす空間はおそらく待合室です。したがって、待合室でのアメニティを向上させることは大変大切です。そこで、診療までの間にやむをえずいる空間という発想から脱却して、待合室をずっといたくなるような空間・場にすることはできないだろうか」と考えたという。
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