娘達がピアノを習うために、当時80万円のピアノを買った。若かったので結構つらい出費だった。日本で作ったピアノは結構価値が高くなってきていて、倍の価格になっているのだそうだ。しかし、私たちが売れば7万円。とほ・・
ふたりとも嫁いでしまったので、ピアノは不要となってしまった。主人はピアノの場所に本棚を置きたくて仕方がない様子。
わたしが今からピアノを習ったらどうする?と、言うと「それだけは、やめてくれ!」とのこと。たぶんピアノを弾くなどとは思っていないだろうし、引くのは弓だけで十分だと思っているのだろう。そんなつまらん冗談はやめてくれと言いたいのだと思う。長年一緒にいると、言いたいことがだいたいわかる。なので、つまらないダジャレが被ることがある。
さて、娘たちはこんなに大きくて厄介なものは引き取ってくれないが、たぶんなくなると寂しがるだろう。しかし、どこかで処分しなくてはならない。殆ど生活の中にピアノの出番はなく、単なる写真置き場になっているではないか。ピアノをどかしたら、旦那の長嶋茂雄の「背番号3の記憶」というのが後ろに落ちていた。思わず「あ、長嶋さん!」と、叫んでしまった。長嶋大ファンと豪語している割にぞんざいな扱いである。国民栄誉賞の誇らしい長嶋さんは、可哀想に埃だらけになっていた。
運送会社のおにいさんは逞しい。肩からベルトをかけて、ふたりきりでひょいと担ぐのである。
ウッドデッキのところから出して、クレーンで吊り上げられた。この瞬間ちょっと寂しかった。家畜のように餌をあげていたわけではないが、毎年調律費用と除湿剤を入れていた。ピアノは牛のようには啼かないが何か言いたげであった。ポロリン・・