(前回からの続き)
実際、このあたりを感じさせるデータが、日本株が大きく値下がりした23日に政府から公表されています。
そのデータとは「GDPギャップ」。この日の内閣府の発表によれば、今年度1~3月期のGDPギャップは2.3%のマイナスとなりました。昨年10~12月期(マイナス2.9%)からはマイナス幅が縮小したとはいえ、わが国の実体経済には依然として大きな需要不足が存在していることが示されました。これを金額にすると10兆円をゆうに超えるレベルとなります。
以前も「内需振興へ期待したい政治のリーダーシップ③ ④」に書いたように、このマイナスのGDPギャップこそ日本経済が抱える大きな課題と考えています。この「デフレ」を解消する需要を生み出すことがわが国の経済政策が目指すべき方向であることに異論のある方はそれほどいないものと推測します。
で、「アベノミクス」はこの需要不足解消に向けてどのように対処しようとしているのか?
まずは内需面ですが、「資産効果」と「財政政策」の2つでしょう。
前者の資産効果は、ご存知のとおり、日銀の「異次元緩和」によるベースマネー拡大と金利低め誘導で株や不動産の価値上昇を促し、その売却益や含み益で実体経済の消費や投資を促そうというもの。
しかしこれは一部の資産家のみに恩恵を与えるだけで、実体経済を広く持続的に拡大させる力はないでしょう。それに、何度か書いているように、資産効果が高まるためには株や土地などの資産価格が上がり続ける必要がありますが、わたしたちはそんなことはありえないことはすでに(内外のバブル発生・崩壊で)学習済みだし、いままた株価急落を目の当たりにしているところです・・・。ということで、(とりわけ株の)資産効果に過度な期待を寄せることは禁物であり、せいぜい実体経済点火のための種火くらいに位置づけておいたほうがよさそうです。
つぎに後者、つまり「財政政策」です。じつは個人的には、これまた「内需振興へ期待したい政治のリーダーシップ⑥ ⑦ ⑧」あたりで述べたとおり、その頃はけっこう期待していたのですが・・・。いまは「微妙だな~」と感じています。日銀「異次元緩和」のせいで(?)国債価格や長期金利が乱高下している現況下では、財政政策の拡大で金融システムの安定が損なわれ、政府の資金調達コストが跳ね上がる懸念があるように思えるからです。こちらの記事にも書きましたが、わが国にはせっかく一定規模の財政政策が効果を発揮しそうな素地があるのに、日銀の度を越した金融政策がそんな環境の良さを打ち消してしまっているように感じざるを得ないのですが・・・。
といったわけで、「アベノミクス」のもとでの株高資産効果と財政政策には、いずれも内需拡大を促す効果を期待できそうもないな、と考えています。そして来年度からはいよいよ消費増税開始(「デフレ脱却」どこへやら・・・)。かくして内需主導の景気浮揚はきわめて難しくなるばかりです・・・。
(続く)