(前回からの続き)
これまで綴ってきたように、「アベノミクス」(≒円安誘導)のこの2年間で進んだ輸入原材料円建て価格の上昇を通じた政策的な通貨安インフレは、あらゆるモノやサービス、とりわけわたしたちにとっていちばん上がっては困る生活必需品・サービスの価格を顕著に引き上げ、景気を冷え込ませる元凶になっています。そのうえで安倍政権は今年の4月、さらに物価高をあおるかのように消費税率の引き上げを行ったのだから、企業活動や市民生活が強烈なダメージ―――円安インフレと増税インフレのWパンチ―――を被り、結果としてわが国がマイナス成長に沈むのは当然です。
以上を言い換えると、先の消費増税が苛烈なものになったのも、そして来年予定の税率再引き上げに関する強い懸念と先送り議論が巻き起こっているのも、すべては足元の円安インフレが厳しすぎるから。そんな意味で、円安を推進する政策=アベノミクスこそが消費増税を難しくしているといえるのではないでしょうか。このことを安倍首相・黒田日銀総裁にはもっと自覚いただきたいし、再増税が悲願の財務省も指摘しないといけないのでは・・・?
消費税率の引き上げ時期後送り判断についての信を問う衆議院議員選挙が行われることになりました。で、安倍政権や与党は再増税の時期を2017年4月と現行よりも1年半ほど遅らせるとのこと。それはある意味、選挙戦術であり、時間稼ぎでもあるわけですが・・・しかし、これまでに綴ってきたことから、もしこのまま日銀の異次元緩和が継続され、上述の輸入原材料価格の円安インフレが引き起こされていけば、そんな「執行猶予」もあまり意味がない。その間に日本経済に増税に耐えられる体力が付きそうにもないからです。それどころか今後も続く円安パンチでいま以上に国民は疲弊するおそれすらあるでしょう・・・。
したがって、真に意味のある選挙の争点は、次回の「消費増税」のタイミングなどではなく、再増税を実質的に不可能にさせた「円安誘導」の是非であるべきだと考えています。つまりそれはアベノミクスの是非、いや、もっと正確には円安インフレを煽り続ける日銀「異次元緩和」に対してYes/Noを問うこと・・・。
とはいっても日銀は政治等からの「独立性」が保証された中央銀行。国民が直接日銀の金融政策に介入することはできません。しかし同政策の決定権を持つ9名の政策審議委員に誰を選ぶか、については一定程度、わたしたちの思いを反映させることができます。同委員は国会同意を経て任命されるからです。
よって今回の選挙における各候補者には、日銀の異次元緩和に関するご自身の考えを有権者に語ってほしい・・・。どんな方が金融政策のかじ取りを担うべきと思っているのか、つまりいまの経済および財政・金融情勢のもとでの意図的な円安誘導がわたしたちにとって良いことと感じているのか、それともその逆か、ということをぜひ明らかにしてもらいたいと願っています。それを聞いたうえで投票所に足を運びたい・・・。
もはや党派の違いに関係はない。ここでしっかりとした人々、少なくとも「マトモ」な(食費や光熱費が上がってつらい、下がってうれしい)人々を選ばないと、「異次元感覚」な(食費や光熱費が上がってうれしい、下がってつらい)人々によって、この国の金融も、財政も、そして国民生活も、本当にブラックホールに突き落とされてしまう―――アベノミクス開始から2年。日本はいま、大きな岐路に立っていると感じます。
(「消費税率引き上げに有効な通貨『高』政策」おわり)
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