(前回からの続き)
わが国の昨年11月の経常収支が5928億円と過去最悪の赤字を記録しました。このところの各月では、貿易赤字を所得収支の黒字が補ってトータルの経常収支はプラスになることもありましたが、11月はその所得収支でも貿易赤字を埋め切れなかった―――これは、石油やLNGなどの輸入燃料代が膨らんだことが原因です。実際、「輸入」は11月としては過去最大となっています・・・。
もちろん経済基盤が強固なわが国は、単月で6千億円程度の経常赤字になったくらいでどうなるものではありません。しかし、この円安モード、「異次元緩和」(≒円安誘導)を実施中の日銀正副総裁の任期中、つまりあと4年以上も続けられる可能性があります・・・。それほどの長きにわたって毎月、数千億円もの経常赤字を垂れ流したら、さすがのわが国も国力を大きく喪失するのではないでしょうか。なぜって、経常赤字→貯蓄の減少→国債消化力の低下→金利の上昇・・・日本経済の根幹が揺らぎかねない・・・。
以前も書きましたが、原発が停止している現在、わが国は大量の火力燃料を輸入せざるを得ないことから、人為的に円安にしても、輸出より輸入のほうが増えて差し引きの貿易収支はむしろ赤字になる傾向があります。逆にいえば、(本稿⑤で書いたような考え方に基づく)ある程度の「円安修正」によって輸入燃料価格を引き下げれば、貿易収支の改善につながるとともに、電気代やガソリン代などの価格が下がって、内需に好影響を与えることになる、という見方も成り立つはず・・・。そんなことも含め、総合的な国益の観点から、そろそろ本気で「適切な円安を議論」すべき時だ―――上記の巨額の経常赤字を目の当たりにして、あらためてそんなことを思います。
本稿冒頭でご紹介した経済同友会・長谷川代表幹事のコメントを再掲します―――「さらなる円安の可能性は否定できない。原発が稼動していたころに比べて(年間)4兆円くらい化石燃料の輸入が増えている。あまり円安を歓迎できないし、円安になっても影響が中立になるように(貿易)収支の改善を考えていかないといけない」―――1年でもっとも暖房需要が高まるこの時節、実業界トップのこの「警句」に、多くの人々が耳を傾けてほしいと願っています。
(「円安:適切な為替水準を議論すべき時」おわり)
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