(前回からの続き)
これまで綴ってきたように、国際スポーツ大会のスポンサー名を眺めていて気づかされるのは、日本企業の顔ぶれの多彩さと、外国企業のバリエーションの乏しさです。これはそのまま日本と諸外国の産業構造の違いを反映していると考えています。つまり、あらゆる業種で世界をリードする企業が何社もあるという国は世界でただ一つ、日本だけ、ということ。これは文字どおり日本経済だけの強みだと思っています。たとえどこかの産業分野が国際競争力を失っても、その他の分野で十分に補えることになるわけですからね(これまでそうだったように・・・)。
本稿のテーマから少し話がそれますが、このあたりでは、わが国は他国ほど通貨安インフレ(≒「悪いインフレ」)の痛みを感じないですむ、ということもいえそうだと感じています。なぜなら、上記構造を持つ日本はたいていのモノは自分たち自身で作ってしまうから。為替変動の如何によらず外国の輸入製品にそれほど頼る必要はないということです。そのへんはブラジル、トルコ、インドネシアなど、いま通貨安にあえいでいる国々とまったく違いますね。彼らは自動車、機械、衣類、医薬品・・・あらゆるものを外国から輸入するしかないので、自国通貨の下落にともなうインフレの被害は大きくなるわけで・・・。もっとも、現在は日本も輸入代替の効かない分野―――モノづくりに不可欠なエネルギーと原材料等―――の「アベノミクス」(≒円安誘導)インフレに意図的に(?)苦しめられているところですが・・・
話を戻します。今回冒頭で述べた日本と異なり、諸外国では有力な企業や得意なジャンルが国ごとに偏っています。すでに書いたとおり、スイスは時計、韓国は「サムスン」「現代(ヒュンダイ)」の2社、欧米諸国は金融・・・といった具合。ということは、かりに時計産業が斜陽化したり、「サムスン」が中国企業に追い上げられて経営不振に陥ったり、「リスクオフ」で大規模な金融危機が起こったりしたら・・・これらの国々の経済は大打撃を被ることになるはず。なぜなら、わが国と違ってそのダメージを埋め合わせる産業や企業が他にないからです・・・。
・・・といったことを思い浮かべると、これらのTV観戦がさらに興味深いものになるでしょう。世界のスーパースターや日本人選手の活躍はもちろん、競技会場のあちこちに見られるスポンサーのロゴにも目がいき、あらためて本邦企業のことも応援したくなりますからね。さあ、まもなく始まる「世界陸上2015北京大会」ではジャマイカのウサイン・ボルト選手・・・ばかりではなく、彼のゼッケンなどにその名が印字された日本企業の飛躍にも大いに期待しましょう!
(「スポーツ大会協賛者名が教える日本企業の多様さ」おわり)
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