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スペインの街角にみるユーロ圏統一への多難①

2012-03-21 00:03:23 | ヨーロッパ

 少し前になりますが、昨年12月、とある紀行番組で登場した街、スペインのビルバオで、ユーロ圏統合が多難な道であることを感じさせるシーンがあったので紹介します。

 スペイン北部の中心都市でビスケー湾に面するビルバオは、かつては鉄鋼業で栄えた町でしたが、現在では鉄鋼業はすっかり衰退し、その面影がわずかに残るだけとなっています。一方で、町中の至る所にオブジェや彫刻を配置するなど、芸術を使った町おこしが進められています。古い工業都市の遺構と新しいアートが調和する、穏やかで美しい街です。

 カメラは歩く速度でビルバオの市街地をゆっくり巡ります。やがて、通りに面した店や住宅に掲げられている旗にスポットを当てました。そこに翻っていたのは、黄色と赤のスペイン国旗ではなく、赤地に緑と白の十字模様が交差する「バスク」の旗です。ビルバオを含むスペイン北部からフランス南西部にかけてはバスク民族が分布しています。独自の文化圏を形成しているバスク人には自主独立の気質があり、以前からスペインやフランスからの分離独立運動を続けている人々も一部にいるそうです。

 ところでスペインの人々はバスクに限らず各地域の自治への思いが強いことで知られています。スペインが世界屈指のサッカー強国であるにもかかわらずナショナルチーム同士が戦うW杯では2010年まで優勝できなかったのは、国民のあいだにスペイン国家への帰属意識が希薄であるためだとする分析もあるようです。あの「バルセロナ」の属するカタルーニャ州でも国家からの自主権拡大を求める運動があると聞きます。

 もっとも、スペイン、そしてヨーロッパはそうした地域主義を乗り越えなくてはならない地点にさしかかっています。すでにスペイン国債の価格は大きく下がると同時に金利が上昇し、自力での資金調達が厳しくなっています。これはスペインを含めたPIIGS諸国やほかの欧州諸国も同様です。これらの国々を救済するためにはユーロ圏の統合推進が必須といわれます。それにもかかわらず、ヨーロッパの多くの国が主権の制限につながるなどの理由で統合に懐疑的になっているし、いまだに多くの地域で独立や自治権の拡大を求める動きがみられます。

 各国が自分たちの権利ばかり主張して統合に背を向けているかぎり、ユーロ圏の未来は多難と感じられます。バスクやスペインの伝統や文化を大いに尊重しながらも、EUが掲げる「多様性の中の統合」こそヨーロッパの人々が最優先で共有すべき理念でしょう。

(続く)


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