(前回からの続き)
というわけで、大方の予想通り、アメリカの債務不履行(デフォルト)は回避されました。米議会が連邦政府に暫定的な国債発行を認める法案を可決したことによるものです。これによって事実上、連邦債務の上限は引き上げられることになります。合わせて閉鎖されていた政府機関の運営に関わる暫定予算を編成することも決定されました。もっとも前者は来年2月7日まで、後者は1月15日までと、いずれも期限付きの措置、つまり時間稼ぎに過ぎません。ということは今回のようなゴタゴタが年明け早々にも繰り返されそうな気配ですが・・・。
それでも世界の金融市場はほっと一息といったところでしょう。もともとこの結果を織り込んではいたとはいえ、とりあえずはドル資金の手当てなどの緊急対応からは解放されるわけですから。実際、デフォルト回避のニュースが流れた直後あたりは「リスクオン」にもかかわらずドルが円やユーロに対して下落したりしていましたし・・・。
しかし、中長期のスパンでみた場合、アメリカの債務上限額がまた上がったという事実は重いと思います。これにより、アメリカの債務の巨大さと、その多くが外国からの借金であることがあらためて認識されたためです。
一方、アメリカにお金を貸す立場の国々にとって今回のアメリカの対応をどう見たか。表向きはどこも上記のデフォルト回避を「歓迎する」わけですが、内心では「ドルの価値の希薄化が進んだ・・・」と感じているのではないでしょうか。そのため、いくらドルが基軸通貨だといっても、今後は対米証券投資に対してより慎重になっていく可能性があります。ちょうど日本の投資家が「円安誘導」にもかかわらずドル資産の購入を増やしていないように。そんな動きが広まると米財政資金のスムーズな調達に支障が・・・。
そもそも(実質的にはチャイナマネーを取り込むために)国債を振り出さなくてはならないということは、それだけ連邦政府の財政運営が厳しいということを意味します。本来ならば歳入の強化、つまり増税を図るべきなのでしょうが、「オバマケア」(医療保険制度改革)を待ち望む市民の多くにはもはやこれ以上の税負担に耐えるだけの経済力はなく、一方では富裕層を支持母体に持つ共和党右派は歳出削減を強硬に主張することで自分たちへの課税強化の動きを阻止しようとしているように見えます。そんなことで、財政再建はとても進む見込みはない・・・。
かくしてアメリカにはこの先も米国債のさらなる振り出し以外に道はなさそう。そして今回のようなことが繰り返されるたびに、世界中の投資家は「まさか」のデフォルトとかドル価値の希薄化を恐れて米国債投資に徐々に及び腰になっていく・・・。そうなればいまのアメリカがもっとも恐れる金利上昇(債券価格低下)が起こってしまいます。で、結局は米FRBが「最後の貸し手」として「財政ファイナンス」、つまり米国債買い支えで金利の上昇を食い止めるしかないでしょう。こちらの記事で述べたとおり、「出口戦略」そっちのけでQEの(無期限?)継続ということになります・・・。そして行き着く先はマネーの洪水「インフレ」―――どうしてもそう予想してしまうのですが・・・。
それでもドルは「ドル>ユーロ>新興国通貨」。欧州や新興国の現状を冷静に考えれば、やはりドルは基軸通貨としての強みで他の通貨よりも上位にある・・・「円」以外に対しては、と思っています。いまはドルの弱さにスポットが当たっている感じですが、ではユーロ、ポンド、レアル、ウォンをドルのかわりに買えるだろうか・・・?
だから「また一歩、外貨は『紙』に近づいた」というのが、今回の騒動を受けた個人的な思いです。
(「アメリカは本当にデフォルトするのか」おわり)
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