先日、イギリスとアルゼンチンが領有権を主張する南大西洋のフォークランド諸島(スペイン語名マルビナス諸島)で帰属国を問う住民投票が行われました。その結果、イギリスによる統治を望む住民が圧倒的多数であることが明らかになりました。現地自治政府の発表によると、99%以上の人々がイギリスへの帰属を支持し、それに反対したのはわずか3票だったとのこと。当然ながらアルゼンチンはこの結果に正当性は無いとのコメントを出しています。
まあこれは大方の予想のとおりでしょう。約3千人の島民のほとんどがイギリス系だからです。日ごろから英語を使い、イギリス風の生活習慣になじんでいる彼ら彼女らは「同諸島がイギリスの領土としての地位の維持を望むか」と問われれば、「イエス」と答えるのが自然でしょう。したがってこの投票結果そのものにはあまり意味はなく、むしろこの時期にこの住民投票が実施されたこと自体が重要と思います。
おそらくイギリスは、大多数の住民による支持をバックにフォークランド諸島の領有権を内外に誇示した上で、同諸島周辺の海底に眠るとされる石油・ガス資源の権益確保を図ろうとしたのだろうと推測しています。そして実際、イギリスはそうせざるを得ない状況に追い込まれつつあるのでしょう。その大きな原因は北海油田の衰退です。
1970年代後半から本格的な商業生産が始まった北海油田は、80年代から現在にかけてイギリスに大きな経済的恩恵を与えてきました。
下記のグラフは1980年から2011年までのイギリスの石油産出量と同国の石油消費量を示したものです(出典:BP社HP)。
これをみると、北海油田の開発が本格化した1980年代初頭に両者の差がプラスとなりました。その頃からイギリスは石油輸出国となっています。その後、一時的に石油産出量は減りましたが、1990年代後半から再び増え、1999年前後にピークとなっています。
しかしその後は石油の産出量が一貫して減り続け、2006年以降、石油産出量と消費量の差はマイナスに、つまりイギリスは石油の純輸入国に転落してしまいました。最近でも石油生産量は減り続けるとともに、消費量とのマイナス差は拡大傾向を示しています。
現時点での予測によると、北海油田のイギリスの鉱区では2020年代には資源の枯渇が進み、多くの油井で生産が終わるとの見通しがされているようです。
(続く)
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