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ドル(米国債)が取り持つ米中関係③

2012-08-13 00:00:23 | 世界共通

(前回からの続き)

 ドル・米国債を巡る米中両国の駆け引きからはこれからも目が離せませんが、貿易・財政の巨大赤字を抱えるアメリカとしては今後もチャイナマネーを借り入れたいし、中国としても「ドル本位制」(人民元売り為替介入等)を維持してこれからも貿易黒字を稼ぎ続けたい、といった思惑がそれぞれにあることでしょう

 結局、両国ともにドル基軸通貨制のメリットを享受していることから、この持ちつ持たれつの関係は今後もしばらくは続きそうです。つまり、両国が決定的な対立関係に陥る可能性は低そうだということ。わが国としても、米中関係を見るときは、人権問題やミリタリーバランスなどの論点の如何によらず、その根幹に両国のこのマネーの貸し借りの関係があることを忘れてはならないと思います。

 そんな米中両国にとっていちばん怖いのはドルの暴落。世界一かつ慢性的な経常赤字国であるアメリカにとっては中国などの海外マネーのキャピタルフライトや金利の急騰は何としても避けたいところ。中国にとっても虎の子の外貨準備がドルの急激な減価で大きく目減りする事態は同国の経済力を揺るがす危機に直結しかねないはず。

 だから、決してそんなことにならないよう、せっせとドル(米国債)を買い入れて結果的にドル不安の発生を防いでいるのは中国なのかもしれないな、などと思っています(これまではその役割はわが国が担ってきたわけですが)。もっとも今後、世界的な金融不安やリセッションがさらに深化し、アメリカがQE3(量的緩和第3弾)を発動してドルの価値希薄化をさらに進めたりしたらどうなるか分かりませんが・・・。

 なお、日本の外貨準備も1.3兆ドル近くと、中国ほどではないにせよ十分に巨額なレベルといえそうですが、最近のリスクオフモードのなかでは通貨の序列が「(金>)円>ドル>ユーロ>新興国通貨」となるために、ドルを筆頭にほぼすべての外貨が円に対して目減りしているものと考えられます。当然、利息相当額の受け取りはありますが、とてもその目減り分(為替差損分)を埋め合わせるほどにはならないでしょう。だから単純に「外貨準備が多い(増えた)!」などと喜んでいる場合ではありません。

 不思議なのは、これほどに外貨が減価して為替差損額が積み上がっていると推測されるのに、わが国にはそれを問題にする風潮がないこと。消費増税議論で分かるように、多くの政治家や大企業経営者、経済学者等が財政赤字の拡大にたいへんネガティブになっているにもかかわらず、円売りドル買い為替介入や(これから実施されるかもしれない)日銀による外債買いのデメリットとしての為替差損の累増リスク(=重大な国富の損失)を指摘する声がほとんど上がりません。

 わが国としては、今後も目減りする可能性の高い外貨準備を過度に増やすことの是非を早急に議論したうえで、そのマイナス面を是正するための対策として、当該外貨を原資とした公共インフラ整備事業を行うか(それによって建設される設備は国家資産となる)、今後も一定額の外貨を持ち続けるのならば、それらのこれ以上の減価を避けるため、「金>円>外貨」の不等式に基づいて世界共通通貨としての金(ゴールド)の全外貨準備に占める割合を高めるなどのリスクヘッジをすべきと思っています。

(「ドル(米国債)が取り持つ米中関係」おわり)

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