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ドル(米国債)が取り持つ米中関係②

2012-08-11 00:01:49 | 世界共通

(前回からの続き)

 中国の強さの源泉であるこのドル資産(米国債)ですが、アメリカとしてはこれを安全保障の観点から見た脅威とみなしていることでしょう。おそらく「どうしたら中国のマネーの力を抑制できるか」がアメリカの国家戦略上の重要課題となっているものと推察されます。

 その対策としてまず考えられるのは、増え続ける中国の対米貿易黒字を抑制することでしょう。そのための有効な手がいうまでもなく為替政策

 1980年代、アメリカは巨額の対日貿易赤字に苦しむ中で「プラザ合意」(1985年9月)によって急激な円高ドル安を演出して同赤字額の削減と日本産業の構造変化(自動車メーカーの米本土への直接投資等)を促しました。

 これと同様の流れに中国を持っていこうとしているためなのか、アメリカは中国に対してたびたび人民元のドルに対する切り上げを要求しています。実際、米財務省が半期に一度発表する為替政策報告書では、最近はいつも中国が為替操作国に認定されるかどうかに注目が集まります。米議会からも繰り返し「人民元の対ドルレートを切り上げよ!」といった声が上がります。

 このあたり中国は日本よりはずっとしたたかな感じ。アメリカのこうした要求に対しては人民元の対ドルレートをほんの少し切り上げるくらいでお茶を濁しています。中国は、プラザ合意後の日本経済の成り行きを重要な教訓にして、通貨高がもたらす輸出減少や産業空洞化(国内雇用の縮小)を回避するため、今後も当面は人民元の「ドル本位制」を継続し、対ドルレートの激変をもたらしかねない人民元の取引自由化は進めようとはしないつもりでしょう

 そしてアメリカの対中経済戦略としてもうひとつ重要と思われるのは、ドルの価値を緩やかに落としていくインフレ政策(とくに外国に対して)巨額の借金をしているアメリカの側からすれば、少しずつインフレにしていけば(ドルの価値を落としていけば)、時間が経過すればするほどドル建て借金の返済負担が軽減されることになります。

 これは中国に対してばかりではなく、わが国などアメリカにお金を貸しているすべての国々に対する戦略としても有効でしょう。そういった意味でも巨額のドル債務の存在は必然的にドルの実質的価値の低下をもたらすので、長い目で見ればドルは、アメリカに多くの資金を貸している国々の通貨(円など)に対して下落していかざるを得ない(円高ドル安にならざるを得ない)だろう、とみています。

 一方の中国ですが、そんなことは百も承知。だから「大半がドルベースとなっている外貨準備をいかにドル以外の資産に分散させるか」が中国にとっての国家的なマネー戦略となるでしょう。

 実際、中国はこの潤沢なドルを使って外国の企業や各種の権益を買いまくっています。最近でも中国石油化工がカナダ・タリスマン社の北海油田事業の権益の49%を取得するほか、中国海洋石油が同じカナダのエネルギー大手・ネクセン社を151億ドルで買収しようとしています。このような中国の企業や権益の買収にはドル減価リスクのヘッジという意味合いがあるものと推察されます。

(続く)

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