さて快調な出だしのようですが、その理由の一つは「ダンピング」でしょう。
全区間400円、ゆいの杜からで350円という運賃水準は、ベルモールや宇都宮駅周辺に出る際の抵抗感も少ない水準です。往復1000円未満ですから。駅西へのバス代を入れても1100~1200円です。(余談ですが追越駅となる平石とグリーンスタジアム前は乗り換えを想定したのか下車しても同一方向だと運賃は通算されますね。どのくらいの時間まで許容されるかは不明ですが。
全区間400円、ゆいの杜からで350円という運賃水準は、ベルモールや宇都宮駅周辺に出る際の抵抗感も少ない水準です。往復1000円未満ですから。駅西へのバス代を入れても1100~1200円です。(余談ですが追越駅となる平石とグリーンスタジアム前は乗り換えを想定したのか下車しても同一方向だと運賃は通算されますね。どのくらいの時間まで許容されるかは不明ですが。
一方これまでのバスは700円前後、要は倍近かったわけで、駅西への直通を踏まえても割高です。手近なロードサイドも多く、そこで済ませてしまうのでしょうし。ただそのダンピングの原資は事実上税金ですから、利用を増やして回収して税金負担を減らそうとすると、輸送力不足がさらに加速、と難題です。
そして避けては通れない公共の負担部分がどうなのか。建設費がその太宗ですが、新設軌道だけあってかなりリッチな仕様です。鬼怒川越えの区間に加え、平石とゆいの杜にある併用軌道と専用軌道の間の出入りが立体交差になっているなど設備投資もかなり太いです。他都市のように信号制御でないのを見ると、やはりバス専用道ではいけなかったのか、という思いはぬぐえません。上記の「ダンピング」とあわせて公共の負担はどれだけになるのか。
もちろん公共交通に完全な独算制は求め得ませんが、歳入は無限ではなく一定であり、そこから交通だけでなく社会保障、福祉、教育、公共インフラとあらゆるジャンルへの歳出が求められていますし、どれも必要性が高いです。ですから交通への支出が適切なのかどうか。湯水のようにつぎ込めばそりゃ良いもの、満足度の高いものが出来ますが、他のジャンルを犠牲にしてまで完璧を求めていいのか。他のジャンルを充足するために「そこそこ」で妥協する必要もあるのです。
さて、軌道優先の信号などのおかげでスムーズに進める反面、電車優先で道路側を全方向停止にしてしまう運用が清原地区で見られます。センターリザベーションの宿命で歩道から横断歩道でアクセスしないといけないのに、早い段階から横断歩道も赤信号になるので、渡れません。道路側が解除されるのは電車が電停を発車してからであり、そこまで道路交通を抑止するというのもおかしいでしょう。今後の増発時に大変なことになります。サイドリザベーションの区間でも横断する通りの前後に上下電停が振り分けられているケースでは、必ず横断が必要ですから。
これに絡んで、トランジットセンターでの乗り継ぎにも影響するわけで、芳賀町工業団地管理センターのほうは横断歩道を2回通過となるので、結構時間を食います。バスとの接続はそれを踏まえているのでしょうか。バスをトランジットセンター内に入れるのは便利なように見えて、構内の取り回しに時間を喰うのも問題です。
あとは車両にも問題点が。車内で目立つモニターには次の停留所などの案内は出ません。広告だけです。これは不便です。
またユニバーサルデザイン対応は当然と思いきや、これがダメダメです。
前後の運転台直後がフリースペースとしていますが、ここは乗降に使うスペースです。また中間車に1ヶ所フリースペースがありますが、下り方を向いて左側のドアの対面のみです。ですから相対式が多い同線においては上り電車だとここへ車椅子やベビーカーがアクセスするのは困難です。
実際家族連れで試乗、というケースが多かった休日、ベビーカーや車椅子が複数台乗車して運転台直後の出入り口を塞ぐとか、乗れずに見送るとか、けっこう弊害が出ていました。ドアを左右対称に設けてその直後に片側でいいからフリースペースを置くのがベストですが、それをするとただでさえ少ない座席定員がさらに減りますし、バスの座席定員を割り込んでしまいLRTにする意味が大きく損なわれます。また座席部が微妙に通路より上がっており、座席を撤去したとしても車椅子などのスペースにするには段差が発生するので、安直な座席撤去も簡単には出来ないのが現状です。そうそう、車両に関して言えば目立つところにモニターはありますが流すのは広告で、次の停留所などの案内は流れません。どうせ通勤客が太宗という割り切りなんでしょうが。
このあたりはLRTでなんとか成立させようとして、座席定員をユニバーサルデザインに優先したきらいが強いですね。こうした姑息な手法は、専用軌道における本来は新設不可能なはずの「踏切」が存在することにも表れており、そこだけ併用軌道としてクリアしているため、警報機や遮断機が置けず、点滅する注意標識という安全面でも非常に中途半端な(イレギュラーな)設備になっています。
併用軌道も実質片側1車線としているのみならず、電停設備が張り出すため、道路側では駐停車が全くできない幅員になっている箇所があります。人の乗降や引っ越しその他での貨物の積み下ろしとか、全く対応できません。このあたりはクルマの停車を否定する軌道系至上主義者が多いですが、マグロのように泳ぎ続けるのではなく、止まるのが前提ということが分かっていないだけであり、交通というツールではなく、電車ごっこを目的化した格好です。
今回は休日の午前中に試乗したのですが、昼前には収拾がつかない状態になっており、早めか遅めにするしかないでしょうね。試乗どころか乗れるかも怪しい状況です。平日の様子も見てみたいのですが、いつになることやら。偶然担当が変わったことで宇都宮への出張が実現しそうなんですが、朝の様子をきちんと見たら仕事に間に合わないわけで、なかなか難しいです。