脱原発の方向に転換した野田内閣は、矛盾を抱えたままの、「民主党の総裁選対策」の感じを免れない。ここで、原発ゼロに躊躇している姿勢では、対立候補に徹底的に違いを責め立てられて、野田陣営が生き残っても、対立の火種を抱えたままの民主党では何も出来ない、と判断したからである。
その先送りした矛盾の最たるものは、【使用済み核燃料の後始末、再処理政策の転換】をどうするか。
地元への説明と了解を得るのに時間がかかると釈明しているが、転換の方策が決められないで、優柔不断でいるだけかも知れない。
海外諸国やマスメディアから大きな矛盾と指摘される問題は、日本は使用済み核燃料をすべて再処理して、【燃料となるプルトニウム】を取り出して、将来は稼働するであろうと想定した「高速増殖炉」の燃料に使用する構想であった。この実験炉は最初からトラブル続きで、使用開始目標はズルズルと延期されて、「プルトニウム」は蓄積される一方である。
アメリカなど核兵器保有国は、「プルトニウムの処理」をどうするかは、最高の軍事機密であるが、日本では蓄積したプルトニウムは平和利用に限定して原発の燃料にしか使わない、と国際的に公約している。
原発をゼロにすると、今までに蓄積した「プルトニウム」は、使用先がなくなり、将来世代に大きな【負の遺産を残す】ことになる。「原発を稼働し続けるべきだ」、と言う推進派は無謀であるが、「プルトニウムの最終処理」を考えずに原発ゼロを断言するのも、無責任のそしりを免れない。
日本でのプルトニウムの用途は、現在の原子炉の燃料に「一定の割合でプルトニウムを混合する燃料」で、原発を運転する『プルサーマル』の技術である。
放射性物質として【最悪のプルトニウム】を燃料に混ぜるなど、拒否反応の強い技術であった。
だが、原発ゼロを目指すならば、このプルトニウムを燃料の一部として利用し、放射性物質として「より危険性の少ない燃えカス」にするしか方法がない。この『プルサーマル発電』を原発数機で実施すれば、今までに蓄積した「処理に困るプルトニウム」を消費し、何とか国際的には説明がつくようになる。
野田政権は、このことを知っていても、「世論の反発を恐れて」、使用済み核燃料の再処理方針の転換を曖昧にしたまま、あと10か月はホウカムリをするノダ。