教育史研究と邦楽作曲の生活

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明治30(1897)年度 鳥取県小学校教員検定試験問題(准教員、教育原理系)

2013年12月26日 23時55分55秒 | 日本教育学史

 昨日の史料の続きです。

 今度は准教員(補助教員)の教育原理系試験問題です。尋常小学校本科准教員は教員職位のなかで最下位に位置するのだが、その試験問題。尋常小学校本科准教員検定試験は、小学校卒業して間もない代用教員が受ける試験だった…はず。史料には正教員問題にあった「教育科」が見当たらない。准教員志望者には課していないのか?

 内容傾向は正教員の問題とがらっと変わってます。なにより、ヘルバルト的な問題よりも、むしろ1880年代に流行した開発主義教授法的な問題がちらほら。「実物教授」「庶物標本」などの概念はまさにそれだと思うがどうだろう。
 正教員と准教員とは、求められた知識・教養がまったく異なるのか? いや、異なるというよりは、正教員は最新の教育学説を知らなければならない、准教員はすでに定着している学説を知らなければならない(その学説は正教員は知っていて当然のもの?)、といったところか。
 それから、かなり実践的な問題が選ばれている気がする。 

 准教員の試験問題からは、「教員生活における当たり前の教育学」とでもいうものが見いだせるのかもしれない。興味深い。


明治30(1897)年度 鳥取県小学校教員検定 乙種検定試験問題(教育・教授・管理のみ抜粋)

【高等小学校本科准教員 検定試験問題】

○ 教授科
 男子之部 [女子之部は出典史料になし]
1.一時一事を教授すべしと云ふ理由を説明すべし
2.教授中書取は如何なる場合に如何にして行ふべきものなるか
3.華氏・攝氏・列氏三種の寒暖計の計算法及改算法を教授するに注意すべき要点を順次に記載すべし

○ 管理科
1.学校管理の当否は品性陶冶に関する所以を述ぶべし
2.試験問題を選定するに注意すべき要項を述ぶべし
3.高等小学校に備ふべき器械の種類を挙げよ

【尋常小学校本科准教員 検定試験問題】

○ 教授科
1.作文の文題を選択するに注意すべき点を述べよ
2.実物教授の必要なる所以を問ふ
3.習字科にてなさしめたる清書は如何に処置すべきか

○ 管理科
1.学校管理の当否は訓練に如何なる影響あるか
2.時間割を定むるに注意すべき要項を述ぶべし
3.読書作文及地理の教授に必用なる庶物標本を挙げよ 

出典
「明治三十年度乙種検定試験問題」『山陰之教育』第31号、私立鳥取県教育会事務所、1897年12月、31~41頁。 

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明治30年度鳥取県小学校教員乙種検定試験問題(教育原理系)

2013年12月26日 01時05分32秒 | 日本教育学史

 鳥取県史編纂のお仕事関係で、鳥取県教育会の機関誌を総ざらいしています。
 その際に小学校教員検定試験問題が目にとまったのでメモ。今後、日本教育学史研究もしたいのですが、その際に参考になるかなと。
 小学校教員に必要とされた教育学知とは何か。小学校教員検定試験問題にそれが反映されているのではと思います。

 問題程度は、正直かなり難しいと思う。シンプルすぎて何を答えさせようとしているのかわかりにくいのも、よけい難しく感じさせる原因だろう。師範学校卒以外のルートだと、この問題を解かないと正教員にはなれなかったわけで、当時において正教員へ上進する困難さが伝わってくる。
 内容傾向にはヘルバルト主義教育学の影響を確認できるが、それ一色ではなさそうだ。結構興味深い。要研究。 


明治30(1897)年度 鳥取県小学校教員検定 乙種検定試験問題(教育・教授・管理のみ抜粋)

【小学校本科正教員 検定試験問題】

○ 教育科
1.意志成長の順序を問ふ
2.教育の目的を問ふ
3.定義とは如何、之を説明せよ
4.ヘルバルト、スペンサル氏の智育説を述べ、之を批評すべし

○  教授科
1.五段教授法の大要を述ぶべし
2.読書科教授の観念主義及文字主義を説明し、其何れを採るべきかを述べよ
3.生徒用教科書は教授の経過中如何なる場合に必要なるか

○ 管理科
1.学校管理の目的を述ぶべし
2.賞ばつ[四+言+寸]を施行するに注意すべき要項を挙げよ
3.学級教授・分科教授とは如何、且其利害を述ぶべし

【尋常小学校本科正教員 検定試験問題】

○ 教授原理科
1.教授は特殊より普通に全体より部分に及ぶべしと云ふ理由を説明すべし
2.教育の事業は教授と教練とより成ると云ふ意義を説明すべし
3.読書科の要旨及其教授法の大要を説明すべし

○ 管理科
1.学校管理の主義を述ぶべし
2.訓かい[言+毎]を施すに注意すべき要項を述ぶべし
3.尋常小学校に備ふべき表簿の種類を挙げ、且其必要を述ぶべし 

出典
「明治三十年度乙種検定試験問題」『山陰之教育』第30号、私立鳥取県教育会事務所、1897年11月、34~41頁。

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