教育学としての教育史とは何か。
教育とは何かを歴史から問うことである。いつ何があったか、誰が何と言ったかといった、ただの歴史的事実の体系ではない。ただの過去の教育についての物語でもない。教育史は、教育とは何かを問い、「教育」という概念を精緻化し、体系化する教育学の営みの一つである。
教育という事象は、歴史学でも、社会学でも、心理学でも、倫理学でも取り扱う。しかしそれは、歴史とは何か、社会とは何か、人の心理とは何か、倫理・道徳とは何かを問うための一つの手段でしかない。教育学のみが、教育とは何かをひたすら問うのであり、「教育」をひたすら掘り下げる。歴史学・社会学・心理学・倫理学などの近接学問が発展するには、教育学が見出した「教育」の概念を用いていくしかない。だから、教育学は一つの学問として必要である。
歴史学や社会学、心理学、倫理学などの近接学問は、教育学にとっても必要である。教育とは何かを問うためには、近接学問の成果が必要だからである。したがって、教育学と近接学問との関係は、相互に支え合う関係にある。教育史も、歴史学や社会学、心理学(心理学史)、倫理学などの成果を必要とする。例えば、歴史とは何か把握しないで、教育史を語ることはできない。教育史の中だけで研究をしていては、すぐに行き詰ることになる。
ただ、教育学・教育史の現実として気になるのは、教育学・教育史は、歴史学や社会学などの近接学問から支えられているように、近接学問を支えているかどうかである。教育学・教育史の成果などどうでもいいと思われていないだろうか。この点は検証する必要がある。
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