教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

道徳授業の教材研究について

2016年11月27日 13時09分30秒 | 教育研究メモ

 毎日いろんなことが滑り込みセーフ?で、常に「間に合わない…」というプレッシャーと戦っております。
 さて、授業の小テストを作っていて、解説がそこそこまとまった内容になったので、ちょっとメモ。

 道徳授業の教材研究に関して。

 道徳の読み物教材を研究する際には、主人公の立場に立ってストーリーを追いかけることも必要ですが、むしろ重要なのはそれとは別の視点です。すなわち、主人公以外の登場人物の言動や立場、および登場人物の置かれた状況にも着目する、複眼的な視点です。道徳的判断は、判断する人がおかれた状況や他者との関係のなかで下される。道徳教育が道徳的判断力を育てたり、道徳的価値の理解を深めたりするのであれば、なぜこのような判断を下したか、別の立場から見ればどのような解釈があり得るのか、といった問題を考える必要があります。そのためには、複眼的視点による教材解釈が、道徳の教材研究の際には不可欠です。
 また、道徳の教材研究の際には、単純な利己主義非難や利他主義・自己犠牲の賞賛に偏らないように注意する必要があります(利己主義非難や利他主義・自己犠牲賞賛の教材は現在でもあまたあります)。人間は、自分のために生きると同時に、他人のためにも生きることが求められる。自分だけのために生きて他人を蹴落とす生き方は自分にとっても周囲や社会のためにもよくないし、自分をまったく殺して他人のために生きることは常人にはできることではありません。私は、普通の人間が社会の秩序を維持・改善しながら生きていくための道徳を考えるのが、道徳の授業であると考えます。そうであるとすれば、道徳の授業は、利己主義と利他主義(自己犠牲)との良いところ・問題点をしっかり考えた上で、自分の生き方を見直す時間である必要があります。道徳の教材研究は、そのための準備なのです。

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