東京里山農業日誌

東京郊外で仕事のかたわら稲作畑作などをしていましたが、2012年4月に故郷の山口県に拠点を移して同活動をしています。

木製の古い唐箕をいただく

2012年12月14日 | 農機具,工具



 10日、中学高校時代の同級生に木製の古い唐箕をいただきました。製作年代を見ると昭和5年に購入と墨で本体に書かれていたので、その頃のものだと思われます。私は、20年ほど前に唐箕が欲しくて、農家を訪ねたことがありました。しかし、ほとんどの方が処分していました。あるのは博物館ばかりでした。このため、仕方なくブリキ製の唐箕を買いました。同級生の家に残っているとのことでいただきました。ありがたいことです。

      同級生にいただいた木製の唐箕、丸部分の木製ジョウゴを紛失、残念!!


 軽トラックを、幸運にもうどん店の「克」の店主に借りることができました。久しぶりの軽トラック運転です。しかし、唐箕を運んだ当日は風が強かったため唐箕のジョウゴを落としてしまいました。ジョウゴが唐箕本体に乗せてあるだけとのことを知らなかったため、紐で抑えておかなかったことが原因です。幌かシートを被せておけばよかったと思いましたが、後の祭りでした。落としたと思われる箇所を何度も往復して探しましたが見つかりません。誰かに拾われたのではないでしょうか。見つかる可能性は低いでしょうが、警察に遺失物の届けを出しておきました。見つからない場合、自作するつもりです。

     通った橋の下を探すも無し           通った道脇の藪を探すも無し
 

 遺失物の届けを出した後、家にもどりました。そして、いただいた唐箕本体の傷み具合や可動箇所を調査しました。ざっと見た感じでは、埃を少しかぶっているだけで傷みやジョウゴ以外の紛失部品はありません。埃を簡単にはらって、調査することにしました。

           黄色の線部分のジョウゴを運搬中に紛失、痛恨の極み


 この唐箕を見て最初に気が付いたのは、唐箕の前後に取手が引き出せるようになっていました。この取手を持って唐箕を持ち運びします。このような引き出し式取手は他の唐箕にはあまりないので、この唐箕を作った木工製作所の工夫でしょう。

        手持ち用の取手              取手は引き出せる
 

 唐箕を使って風選した穀物の出口は三つあります。一つは、殻が取れたた玄米の出口,殻と玄米が混じったいわゆる屑米や実が少し入ったシイナが出る出口,そして、風と一緒に殻が吹き出す出口です。屑米や実が少し入ったシイナは、もう一度唐箕を通して再度風選します。

       玄米が出る出口              屑米や実が少し入ったシイナの出口   
 

 次に、風を絞る工夫がされていました。これは、お米以外の豆などを風選することができるようにした工夫ではないか思います。想像ですが、大豆などの重い穀物は風を絞らないように、粟や黍などの軽く小さな穀物は絞っていたのではないかと思います。

      風の出口を絞って狭く                風の出口を開けて広く
 

 次に、唐箕で一番重要な穀物投入口を調べました。ここは、大豆や籾などの穀物を入れる場所です。ここは、穀物を定量的に分散して落とすメカニズムになっています。ここも特に傷んでいる様子はありませんでした。

             風選する大豆や籾などの穀物を入れる投入口


 まず、投入口を開けたり閉じたりする部分です。穀物の大きさにあわせてここを操作して、投入口を開けます。大豆のように大きなものは大きく開き、粟のように極小の穀物は狭く開けます。どの箇所も均等に開けられるかも大切です。

     投入口を閉じた状態              投入口をわずかに開けた状態
 

 次に投入口に入れた穀物の落下速度を決めたり分散させる板がありました。普通の唐箕にはこのような装置はありません。投入口の真下に、その板が出たり引っ込んだりします。穀物をゆっくり落としたい場合は、この板を出して当てます。すると穀物が一度当たって跳ねて落ちる仕掛けです。しかも、調節がスライド式なのは面白い工夫です。

     右にスライドすると板が隠れる        左にスライドすると板が出てくる
 

 次に、風をおこす回転部分を見ました。面白いのは、普通の唐箕はプロペラを回転させるハンドルの持ち手は木のままです。しかし、この唐箕はその持ち手部分に竹の輪っかがはめ込まれています。同級生の祖父が工夫してはめ込んだのかも知れません。この竹があると、スムーズに回転できます。その竹の表面はつるつるに光っていました。何十年も、家族がこの唐箕を大切に使っていたことが分かります。

                プロペラを回転させる取手、つや光りする竹の持ち手


 この唐箕には製造と購入に関する情報が墨で書かれていました。まず、製造は田布呂木の川端製作所です。田布呂木は平生と柳井市の境界にある峠の地域名です。田布呂木に昔、木工製作所があったのですね。次に購入の情報も墨で書かれていました。購入日は今から82年前の昭和5年(1930年)9月3日です。購入者名は、同級生の祖父の名前とのことでした。この唐箕を購入して家に運び込んだ当時、同級生の祖父は若く希望に燃えていたのではないでしょうか。そのほころぶ顔が目に浮かぶようです。

      購入に関する墨書                製造に関する墨書
 

 いただいた木製の唐箕の内部を確認しました。内部を見ると唐箕の仕組みがよく分かります。手でハンドルを回すと、ハンドルに連結する内部のプロペラが回って風が発生します。その風で、落下中の穀物が実と殻とに分離される仕組みです。
 「唐箕」と言うくらいですので、中国から伝来したのでしょう。それまでは、「箕」(または「手箕」と呼ぶ)と呼ばれるザルを使って穀物を風選していました。私の父方祖母は川の土手の風の強い場所に行って、箕をふるうようにして大豆などの穀物を選別していました。箕は熟練しないとうまく使えません。唐箕は素人でも使える上に自然の風を使う必要がありません。風が吹かない室内でも穀物を選別できる当時画期的な農機具でした。父方祖母は唐箕を持っていませんでしたので、唐箕を借りることができない場合に箕を使って穀物を選別していました。

                唐箕の内部構造、穀物を選別する仕組みが分かる

コメント
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