ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

筑波子 月次絶句集 「歳晩老懐」

2012年12月30日 | 漢詩・自由詩
掃煤舂餅対春華     煤を掃い餅を舂き 春華に対す

萬物秋霜両鬢嗟     萬物秋霜 両鬢嗟す

塵外吟詩知死所     塵外に詩を吟じ 死所を知り
 
酔郷酌酒作生涯     酔郷に酒を酌み 生涯を作す


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(韻:六麻 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

読書ノート 外村 大著 「朝鮮人強制連行」  岩波新書

2012年12月29日 | 書評
国民総動員法が生んだ、朝鮮人労務動員計画の実情 第3回

序(3)
「朝鮮人強制連行」が行なわれた背景には、日中戦争以降の日本人男性の労働力不足があったこと、労働者の動員は日本政府が1939年以来敗戦まで毎年策定した計画に基づいておこなわれたこと、権力的(暴力的)な要員確保が行なわれたである。政府計画に基づき、本人の自由意志に関り無く、民間企業の誘致採用活動によるものではなく、行政の末端職員と民間人まで動員して行われたことを意味している。つまり国策として実行された戦争動員政策であった。日本内地の日本国民も「国民徴用令」によって動員されていた。しかし植民地朝鮮においては、強制的に時には暴力を伴って実施され、逃亡する朝鮮人もいたという実態において民族差別が露骨であった事を問題視すべきであろう。無論それ以前にも朝鮮から日本へ生活の資を求めて合法的・非合法的に渡日する人は多かった。植民地につきものの生活の向上を目指して宗主国への就労する人の流れは存在したが、なぜ一方では無理やりの朝鮮人労働動員をかけたのであろうか。その矛盾にみちた政策こそ、植民地支配の実情を反映しているのである。その原因を本書で明らかにしてゆくのであるが、結論をいうと内地では植民地の民衆が日本国内に入る事を嫌って、外国人入国許可などの抑制をしていた。日中戦争及び太平洋戦争を遂行するため、厚生省労働局は戦時物質生産のための労務動員を行なった。ところが内地での人的資源も逼迫し、特に労働環境の厳しい炭鉱や土木作業に日本人の就労者が少なかったので、植民地朝鮮からの労務動員に期待がかかった。炭鉱や土建企業の前近代性がより安い植民地特有の奴隷労働を欲したからである。
(つづく)

読書ノート 上野千鶴子著 「家父長制と資本制ーマルクス主義フェミニズムの地平」 岩波現代文庫

2012年12月29日 | 書評
男と資本の奇妙な野合 「お一人様」が吼える 第17回

第8章 家父長制と資本制 第1期

 第Ⅱ部はいわば理論を応用した社会分析篇である。第一期とは19世紀の産業革命から20世紀初頭までを指すようだ。近代以前の社会では生産と再生産の単位は「家族」(奴隷から家畜まで含む)であった。この家族経営体(家政)は一種の家族労働団で、すべての労働は「家内労働」で、生産労働と家内労働の区別はなかった。産業革命によって土地を持たない無産者でも自分の労働力で自分の家族を営むことが可能となった。近代化にともなう飛躍的な婚姻率の上昇と単婚家族の大衆的な成立がもたらされた。誰もが結婚できるようになった時代、それが近代である。近代市場の労働力としての個人は男女年齢を無視した「単身者」であり抽象的労働力であった。最初の産業革命時には紡績業の女工にみられる伝統的な性分業の残滓があり、家族労働団の世代構成がそのまま工場に持ち込まれる場合もあった。しかしこの賃金労働の報酬は個人に支払われるもので、家父長制の威信構造は貨幣経済によって脅かされた。資本制が市場外的な要因、つまり家庭問題や貧困に付き合わざるを得なかった。イギリスで「救貧法」ができ福祉政策という資本制を補完するものが必要であった。少年の就労を制限する「工場法」や婦人労働保護法などもできた。こうして少年と女性は労働市場から消えていった。

 資本は労働そのものの対価というよりは家族を支えるにたる「家族給」を支払った。これして世帯主単独収入型労働が男性中心に整備された。イギリスでは19世紀半ばから「ヴィクトリア時代」といわれる産業経済の発展と繁栄の時代となった。家庭性の崇拝、性の抑圧の規範に基づく性分業型の「近代家族」が成立する。男性世帯主だけが賃金を得るという家父長的家族である。資本制は個人としての労働力を念頭に置くが、家族をバラバラにする社会的コストよりも、家族を維持して労働力を得るコストの方が安いと判断したようだ。この資本制と家父長制の歴史的に成立した妥協を「ヴィクトリアン・コンプロマイズ」と呼び、家父長制的資本制が誕生した。この意味では二元的である。家族とは「自由で孤立した単婚家族」で、伝統的な共同体とは異なった近代特有の産物である。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「守 歳」

2012年12月29日 | 漢詩・自由詩
朝来暮去歳華流     朝来り暮去りて 歳華流れ

慙愧無為白髪愁     無為を慙愧す 白髪の愁い

萬事匆匆猶有恨     萬事匆匆 猶恨有り
 
一宵猝猝更難留     一宵猝猝 更に留め難し


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(韻:十一尤 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)