医療に関する提言・レポートfrom MRIC(2010年9月7日)「帝京大学病院におけるアウトブレイクに警察権力の介入を許すな」 森澤雄司 自治医大大学病院感染制御部長 より
帝京大学病院の多剤耐性アシネトバクター・バウマニによるアウトブレイクが報道されて、待ってましたとばかり警視庁が業務上過失致死の疑いで動き出した。冷静に病院内を考えてみよう。病院そのものが感染症の温床であり、患者に応じて多様な抗生物質を集約して使う場であり、医療行為には常に感染リスクが付きまとうものであり、感染媒体である医師・看護師が病室間を動き回っているし、病院内には免疫力の弱いがん患者が存在するという条件がそろった場所である事をよく認識しておこう。多剤耐性アシネトバクター・バウマニはMRSAや多剤耐性緑膿菌とあわせ対策が困難である。医療従事者の手指衛生と個人防備具使用の徹底と、水周りなど環境対策が重要なことはいうまでもない。多剤耐性アシネトバクター・バウマニは抗菌薬耐性獲得業の優れもので殆どの抗生物質に耐性を持っている。厚労省も多剤耐性アシネトバクター・バウマニに注目し2009年1月に病院内における発生を報告するよう通知をだしているが、これには法的義務はなく「お願い」レベルの通達であった。したがって「保健所への通知が遅かった」という批難は当たらない。ここで心配なのは厚生官僚が自己保身に走って、病院への行政処分という安易な仕事をする可能性があること、警視庁が「医療従事者の怠慢で感染が起きた」というストーリーをでっち上げて「医療事故」にすることである。これによって病院は萎縮し、必要以上に防護的になると第2の「大野病院事件」により「医療崩壊」を一層に進めてしまうことが危惧される。冷静な当事者対応が求められる。
帝京大学病院の多剤耐性アシネトバクター・バウマニによるアウトブレイクが報道されて、待ってましたとばかり警視庁が業務上過失致死の疑いで動き出した。冷静に病院内を考えてみよう。病院そのものが感染症の温床であり、患者に応じて多様な抗生物質を集約して使う場であり、医療行為には常に感染リスクが付きまとうものであり、感染媒体である医師・看護師が病室間を動き回っているし、病院内には免疫力の弱いがん患者が存在するという条件がそろった場所である事をよく認識しておこう。多剤耐性アシネトバクター・バウマニはMRSAや多剤耐性緑膿菌とあわせ対策が困難である。医療従事者の手指衛生と個人防備具使用の徹底と、水周りなど環境対策が重要なことはいうまでもない。多剤耐性アシネトバクター・バウマニは抗菌薬耐性獲得業の優れもので殆どの抗生物質に耐性を持っている。厚労省も多剤耐性アシネトバクター・バウマニに注目し2009年1月に病院内における発生を報告するよう通知をだしているが、これには法的義務はなく「お願い」レベルの通達であった。したがって「保健所への通知が遅かった」という批難は当たらない。ここで心配なのは厚生官僚が自己保身に走って、病院への行政処分という安易な仕事をする可能性があること、警視庁が「医療従事者の怠慢で感染が起きた」というストーリーをでっち上げて「医療事故」にすることである。これによって病院は萎縮し、必要以上に防護的になると第2の「大野病院事件」により「医療崩壊」を一層に進めてしまうことが危惧される。冷静な当事者対応が求められる。