ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート ジョン・ロック著 加藤節訳 「完訳 統治二論」 岩波文庫

2014年08月07日 | 書評
政治権力の起源を社会契約に求める近代政治学の古典的名著 第19回 最終回
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後篇 政治的統治について
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14) 統治の解体について
 政治社会の解体と統治の解体とは区別される。人々の合意に基づく政治的共同体の結合が解体される通常の契機は外国勢力の侵略である。社会の構成員はばらばらに離散するか、別の社会において自力でやり直すか、身の安全を図るため元の自然状態へ戻ることになる。そして社会が解体するときその社会の統治も明らかに存続することはできない。ところが統治は内部からも解体される。立法部が改変される場合である。社会の本質と一体性は一つの意志を持つことであり、多数派によって立法部が樹立されれば、政治社会は一体化(結合)される。立法部の形成は社会の最初の根本的な行為である。人民の同意と任命で指導者は法を作り一体性の継続のために活動を開始する。人民の合意が崩れたときには、彼らが最適と思う新たな立法部を自ら設立してもよいということである。ところが権力を誤用し契約に反する政治的共同体の執行者がいるケースはどうして起こるのだろうか。それは立法部が、第1に至高の執行権力を持ち議会を招集し解散させる権力を持つ一人の世襲人物がいる場合、第2に世襲貴族の集会、第3に人民によって随時選出される代表者の集会の3者の力の相互関係におかれているとしよう。つまり絶対君主と貴族と人民の3者のプレーヤーがいる政治的緊張関係である。絶対君主の恣意によって立法部は容易に改変される。さらに最高の執行権力を持つものが責務を果たさず法が執行されない場合である。そこにはもはや統治は存在しない。立法部あるいは君主のどちらかが彼らに寄せられた信託にそむいて行動した場合である。立法部はこの信託違反によって、人民が立法部においた権力を喪失し、人民にその権利が復帰することになる。人民の真の代表者や社会の立法者の代わりに、このような無定見な議会を準備し、自分の意志の公然とした推進者を立てることは、考えるうちでも最大の信託違反であり、統治を転覆しようとすることになる。この統治変更に反対することは反逆(国家転覆罪)となるのだろうか。いや人間の弱さに由来するどんな過失があったとしても、人民は反抗もせず不平も言わずじっと耐え忍ぶことができるとはいえ、自分たちがどこへゆくかを悟った時は、人民自ら決起し、統治が最初に設立されたときの目的を保証してくれる人々の手に支配権を移そうとすることは不思議ではない。人民は立法者が彼らの固有権を侵害することによって、信託に反する行動をとった時には、新たな立法部を設け、改めて自分たちの安全を図る権利を持つ。暴政は法を無視した権威なき戦争状態であるので、各人は自分自身を防御し、攻撃者に抵抗する権利を持つ。ここでロックは君主権力の唱道者バークレイの言葉を引用して、なお人民が王権に抵抗することは合法的であるという結論を引き出して、本章を締めくくった。

(完)