ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 岡田雅彦著 「医療から命をまもる」(日本評論社 2005年12月)

2013年12月24日 | 書評
現代医学の常識と誤りから自分の健康を守る 第3回

3) 治療で命が縮む?
 医療行為の±面を「総死亡」まで調べて比べるという考えは従来ありませんでしたが、欧米での最近の研究によると、命を救うはずの医療行為(検査・治療)が逆に命を縮めているということが分かりつつあります。まず不整脈の治療について見ましょう。上室性期外収縮、心室性期外収縮、心房細動ですが、通常これらの不整脈が命に係わることはありません。ところが心筋梗塞にかかった後に起こる心室細動が突然死の原因といわれています。AEDによって救命率が向上しました。それでも重症の不整脈の救命率は30%から2%といわれています。米国で重症不整脈を予防する薬3種の大規模調査が行われました。対象は心筋梗塞を起こした2300人の患者さんで、結果は総死亡がむしろ高くなって、調査を継続することが危険と判断され中止になりました。偽薬のグループの総死亡率は3%、薬投与グループで総死亡率は7.7%に増加したのです。それ以降も重症不整脈予防薬の大規模調査が行われてきましたが、結果は無効であるか有害であるということです。同じように抗がん剤の副作用は「発がん」であるという宿命があります。次にC型肝炎治療のホープであるインターフェロンの効用を調査した例を紹介します。C型肝炎ウイルスに感染すると、半数の人が慢性肝炎になり、10年間で約20%の人が肝硬変に進行し、さらに年間5%で肝硬変から肝がんへ進行するといわれています。そこでウイルスの増殖を抑えるというインターフェロンに期待が集まりました。ところがインターフェロンの効果について大規模調査が行われていません。肝硬変患者を対象としたインターフェロンの効果(肝がんへの進行を抑制する効果)を調べた比較試験があります。インターフェロン治療は最初高い熱が出るため、偽薬を使ってもばれてしまいますのでブラセボなしで試験が行われた。対象患者は99人で3年間、投与グループと無治療グループが比較された。肝臓がんに進行した人は治療区で5人、無治療区で9人となりインターフェロン投与の抑制効果がみられたが、問題は総死亡者で治療区で10人、無治療区では7人であった。インターフェロン治療のほうが短命であったということです。日本でのインターフェロン治療成績が抜群に優れているという報告は、治験数が少ないと、良い成績を出したい医療側で不都合な患者を除いたり、恣意的に対象を選択するという操作が暗黙裡に行われやすい体質を日本の医療界は持っている。つまり母集団にバイアスがかかり易いため、治験数(患者の数)が1000人以上でないとその調査結果はにわかには信じがたいものです。新聞の世論調査と同じ原理で、調査数が費用上の制約で数千人だと、新聞社の特徴があらわに出て自民党よりの読売新聞の世論調査では自民党に有利な世論が誘導され、中道左派の朝日新聞だとそうでない世論が誘導されるのである。むろんアンケートの文章や選択方式によって新聞社の望む結果が出るように仕組まれて(操作されて)いるからである。世論調査は数十万は必要である。むろん世論誘導は毎日の新聞記事や同系列のテレビ局報道などで執拗に行っているので、アンケート調査はそのことの確認に過ぎない
(つづく)