ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 春山昇華著 「サブプライム問題とは何かーアメリカ帝国の終焉」  宝島社新書

2008年08月28日 | 書評
米国の住宅バブル、略奪的貸付、証券化金融技術、世界資本市場からサブプライム問題を解明 第2回
序(2)

 金融技術によって、金を借りる相手がローン会社だと思っていたら、ローン債権は証券会社に売られ投資家が小口の権利を保有するのである。ローン会社(ブローカー)や銀行はどうせ他人に売るのだから破綻しても知った事かと云うモラルハザードになった。ブローカーや銀行や証券会社は手数料で稼ぐのだから、リスクは負わないし法的契約責任は追及されないので、むちゃくちゃな貸し付けを行った。NINJA(ニンジャ)ローンといわれる種類のローンが登場し、無収入、無職、無資産層にリスク無視で貸しつけた。住宅価格が金利以上に上昇していればそれでも何とかつじつまが合うのだが、そんな無茶な仕組みが成り立つわけもなく最初から略奪的貸付(ブレンダトリーレンディング)であった。日本のサラ金地獄以上の惨状である。米国の住宅バブルは崩壊し、2006年以降住宅価格は下落した。一切が砂上の楼閣となった。この事態を起した責任の一端は、ローン債権を仕組み債権として販売する金融商品に格付け会社がトリプルAと云う太鼓判を押して、世界の金融機関、年金基金、ファンドに売りまくったことにもある。

本論に入る前に、著者春山昇華氏の紹介をする。1978年京大法学部卒業後、円債、外債、為替投資そしてロンドンで国際分散投資に従事した。帰国後は国内外の投資顧問会社で年金基金運用に従事し、投資信託、CIOで活躍。現在はさる金融機関で運用業務に携わっている。要するに資産運用のプロと云うことだ。生き馬の目を抜くような生活って疲れるだろうな。わたしにはとても出来ませんが、知らない世界のことで騙されないように、知識だけは仕入れて耳年増になりたい。

読書ノート 真野俊樹著 「入門 医療経済学」 中公新書

2008年08月28日 | 書評
医療制度を考える上で、医療経済学的視点は欠かせない 第13回
医療経済学とは何か (1)


 経済学の方法論で医療に適用できそうないくつかを取り上げている。「産業組織論」のS-C-Pパラダイム(産業構造ー行動ー成果)の流れで医療を見ると、日本全体の医療の体制と規制のなかで医療機関が営利を何処まで目指して行動するのか、そして国際的に日本の医療のパフォーマンスはどう評価されるのかにつながる。一医療組織に数量的な評価を求めるには限界が多い。「公共選択論」は市場以外の経済学的研究として、或いは政治学への適用として社会契約的解決をめざす。経済行動の主体として、政策決定に関与する政治家、官僚、社会利益代表(プレーヤー、ステークホルダー)などの行動に関する経済的分析を重視する。個人の利己的選択が果たして全体の最適な選択になりえるのかと云う点はジレンマに満ちていることをノイマンの「ゲーム理論」は示している。経済プレーヤーの行動を心理的バイアスから説明しようとするカーネマンの「行動経済学」は医療行為者が人間である限り心理的側面も重要であろうと云うことを示唆する。

環境問題 丸山茂徳著 「科学者の9割は地球温暖化炭酸ガス犯人説はウソだと知っている」  宝島社新書

2008年08月28日 | 書評
地球は寒冷期を迎え、人口爆発で石油は枯渇する事態こそ文明の最大危機だ 第4回
序(4)

 私は地球環境問題は紛れもなく地球資源問題であり、石油エネルギー資源や食糧資源問題に直結していると思う。1988年の地球温暖化防止枠組機構と1997年の京都議定書(COP3)はいわば経済の軍縮会議であり、石油使用割り当て会議である。そこで何時まで日本政府と環境省のバカ役人はドンキホーテを演じ続けているのだろうか。炭酸ガス削減数値目標は戦前の軍艦比率と同じであり、縛りを受けたくないアメリカは即地球温暖化防止枠組機構から脱退した。福田首相は分っているのか無知なのか、洞爺湖サミットで優等生振りを発揮したいために「2050年までに50%削減を目標としよう」と主張した。結局7月の洞爺湖サミットは同意はなく、「認識を共有し、議論だけは続けましょう」というう官僚言葉でお茶を濁さざるを得なかった。石油高騰問題と穀物高騰問題が地球温暖化問題を吹き飛ばしたのである。グローバル金融資本の目先の利益優先が勝ったといえる。欧州は日本を先ず縛る事に全力を挙げている。地球温暖化目標と石油高騰で日本を追い込みたいのである。日本は何時までも馬鹿をやっている余裕はないはずだ。

本書は著者の地質学・地球科学の研究の専門的知識で21世紀の地球の気候を予測する第1章:「地球温暖化」炭酸ガス犯人説のウソと「寒冷化」の予兆、第2章:「成長の限界」と人類の危機、第3章:人口減少時代の日本の政策 からなる。ICPPの地球温暖化予測を検証する第1章は、ICPPがこれまで「異論」として無視してきた理論・仮説をとりあげて科学的に著者が反論し、むしろ地球は寒冷化するという予測を出している。第2章と第3章は著者が政治論や文明論を振りかざして、政府の政策の誤りを追及するところである。私には納得できない論点や主張の違いがある。この本を読んで読者がどう思われるかは、読者にお任せしたい。そこで第1章を中心に紹介することにして、第2,3章は要点のみとしたい。

自作漢詩 「秋 陰」

2008年08月28日 | 漢詩・自由詩


紫峰煙雨足秋     紫峰煙雨 秋陰足る

草露侵衣傷客     草露衣を侵し 客心傷む

織女牽牛吟蟋蟀     織女牽牛 蟋蟀吟じ 
    
一盃緑酒夜偏     一盃の緑酒 夜偏に深し

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(赤い字は韻:十二侵 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)