とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

佐比売山(さひめやま)

2010-09-20 15:54:43 | 日記
佐比売山



 佐比売山(さひめやま)は島根県の三瓶山の古称です。『出雲国風土記』の国引き神話では綱を結んだ杭の役割をしています。この山は「さひめ」という農耕の姫神が宿る神聖な山として古代から崇められていました。この山の名前が歌詞の中に出てくる校歌を誇りを持って大きな声で歌ってください。
 ……このような話をある勤務校の全校朝礼の時に子どもたちの前で話したことがあった。するとその直後、「出雲の国と石見の国の境目(さかひめ)の山という意味から生まれた名前だという説もあるんだけど……」と同僚が教えてくれた。私はお礼を言いながら地名起源を考察する難しさを感じた。
 こういう事柄に関しては定説がないことも多い。私が知るこの二つの説を整理すると、①「さかひめ」と考え「さひ/め」と区切って考える説、②「さ/ひめ」と区切って考える説の二つになる。私はこれを決めるポイントは「さ」にあると考えている。古代の日本語では「さ」は「さをとめ」「さなへ」などの「さ」に通じ、「田の神」を意味している。従って「さかひ」がつづまって「さひ」となるという①の説には無理がある。だから私は「さ(田の神)」も「ひめ(姫・媛)」も言葉として二つとも生きてくる②の説をやはり採りたい。 「さひめ」と深く関わる神社として県内では益田と大田に「佐比(毘)売山神社」がある。また三瓶山の北側に「佐津目」という地名がある。『佐田町史』では田の神の「佐比売」に繋がるのでは、と説明している。このテーマは浅学の私には手に余るが、地名には長い歴史と文化が封じ込められているのことは確かである。補足であるが、三瓶山に改名された理由も確たる学説がない。