和製ターザン
昭和二十年代後半といえば、私が小学校低学年のころである。当時から私は新聞愛読者であった。いや、実を言うと、『サンケイ新聞』に連載されていた山川惣治の絵物語「少年ケニア」の熱烈なファンだったのである。アフリカのケニアで日本の少年「ワタル」が白人の美少女「ケート」とともに原野や密林を走り回って大活躍をする物語である。
「ワタル」は父親とケニアを調査していたが、いつしかはぐれて一人でさまよっていた。しかし、「ケート」にめぐり合ってからは共に生活するようになる。彼女はブロンドの長い髪を風になびかせていた。豹の皮の衣服を身に着けていた。「ワタル」の武器は長い槍だった。上半身裸でぼろぼろのショートパンツをはいていた。
私は「ケート」の姿に野性的な魅力を感じていた。長い髪の動きをリアルに描いてあった。それに対して「ワタル」は黒いショートヘアで、大きな愛くるしい眼をしていた。大蛇の「ダーナ」を連れていた。そして、原住民たちと出会い、恐ろしい猛獣たちと槍一本で戦って、「ケート」を守って父親を捜し求めて旅を続けていく。
「ワタル」は和製ターザンである。痩身にもかかわらず強靭な体力の持ち主で、優しい面差しをしていた。また、「ケート」に女性の美しさを見出していた。子ども心ながら、恋をしていたのである。新聞を見るたびに「ケート」への思いは深まっていった。こんな女の子が本当に目の前に現れたらいいのに、と本気で思っていた。また、「ワタル」のような長い槍が欲しくなった。その勇気も欲しかった。山川惣治は田舎の地味な少年に冒険のすばらしさ、女性の美しさを教えてくれた。(2007年投稿)
昭和二十年代後半といえば、私が小学校低学年のころである。当時から私は新聞愛読者であった。いや、実を言うと、『サンケイ新聞』に連載されていた山川惣治の絵物語「少年ケニア」の熱烈なファンだったのである。アフリカのケニアで日本の少年「ワタル」が白人の美少女「ケート」とともに原野や密林を走り回って大活躍をする物語である。
「ワタル」は父親とケニアを調査していたが、いつしかはぐれて一人でさまよっていた。しかし、「ケート」にめぐり合ってからは共に生活するようになる。彼女はブロンドの長い髪を風になびかせていた。豹の皮の衣服を身に着けていた。「ワタル」の武器は長い槍だった。上半身裸でぼろぼろのショートパンツをはいていた。
私は「ケート」の姿に野性的な魅力を感じていた。長い髪の動きをリアルに描いてあった。それに対して「ワタル」は黒いショートヘアで、大きな愛くるしい眼をしていた。大蛇の「ダーナ」を連れていた。そして、原住民たちと出会い、恐ろしい猛獣たちと槍一本で戦って、「ケート」を守って父親を捜し求めて旅を続けていく。
「ワタル」は和製ターザンである。痩身にもかかわらず強靭な体力の持ち主で、優しい面差しをしていた。また、「ケート」に女性の美しさを見出していた。子ども心ながら、恋をしていたのである。新聞を見るたびに「ケート」への思いは深まっていった。こんな女の子が本当に目の前に現れたらいいのに、と本気で思っていた。また、「ワタル」のような長い槍が欲しくなった。その勇気も欲しかった。山川惣治は田舎の地味な少年に冒険のすばらしさ、女性の美しさを教えてくれた。(2007年投稿)