医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

冠動脈CTの施行でステント治療が増え医療費も増えた

2012年04月21日 | 循環器
以前冠動脈CTについてお伝えしました。それまでは心臓のように常に動いている臓器の撮影は不可能でしたが、技術の進歩により撮影が可能になりました。造影剤を注射して横になっていれば、上のような心臓の血管が撮影できて、どこに狭窄があるかも一目瞭然です。

Association of coronary CT angiography or stress testing with subsequent utilization and spending among Medicare beneficiaries.
JAMA 2011;306:2126.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

2005年から2008年の間に動脈硬化性心疾患の疑いで、冠動脈CTか、従来から用いられている運動負荷心筋シンチグラフィーや薬物負荷心臓エコーを受けた66歳以上の282,830人が調査されました。

冠動脈CTを施行した群では、その後心臓カテーテル検査を受ける割合が増え(冠動脈CT群 23%、シンチグラフィーかエコー群 12%)、ステント治療を受ける割合が増えました(冠動脈CT群 7.8%、シンチグラフィーかエコー群 3.4%)。

その反面、患者の検査後6か月の死亡率は、両群で変わりありませんでした(冠動脈CT群 1.05%、シンチグラフィーかエコー群 1.28%)。

検査後の経過における医療費は、冠動脈CT群で、シンチグラフィーかエコー群と比較して約40%高額になりました。

つまり、病院が儲かるようになっただけで、患者の有益性にはつながっていないということです。

冠動脈CTが施行できるようになり、最初の「冠動脈CTがさらなる検査や不必要な処置を減らし、医療費を減らす」という期待とは反対となってしまいました。

心筋梗塞は、心臓の血管がかなり狭くなった場所以外から発症することが多いので、冠動脈CTでかなり狭くなった場所を見つけても、死亡を改善できないのは当たり前のことです。

この論文の著者たちは、「冠動脈CTを施行して高額な医療費を支出することで、患者の利益につながるか分からない。この調査は6カ月間であり、冠動脈CTとその後の死亡率との関連を正当に評価するには、長期にわたる研究が必要である」と述べています。

私は、長期にわたって調査しても、医者側が運動負荷心筋シンチグラフィーを施行して本当に心臓が血液不足になっている場所と範囲を正当に評価してステント治療をしない限り、結果は同じだと思っています。


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