医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

B型肝炎のワクチンは多発性硬化症の発症を増やす

2005年06月04日 | 神経
Neurology. 2004;63:838からの報告です。
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

そろそろ皆さんも統計学的な感覚が身に付いてきたのではないでしょうか。
多発性硬化症という病気があります。これは神経の硬化(体の硬化ではありません)がいろいろな神経に多発して視神経炎による視力低下や顔面感覚の低下、四肢脱力などが起きる病気です。わが国での有病率は10万人に1~4人で、欧米白人の30~80に比べて少ないと報告されています。発症年齢は比較的若く、約80%が20~50歳の間に発病します。

多発性硬化症の人163人とそうでない人1,406人を比較したところ、多発性硬化症でない人が過去にB型肝炎のワクチンを接種していた率が2.4%だったのに対して多発性硬化症の人の接種率は6.7%と「統計学的に有意に」高かったそうです。ちなみにインフルエンザの予防接種の摂取率は多発性硬化症でない人で6.0%、多発性硬化症の人で6.1%と差はなかったようです。6.7%と2.4%の差、4.3%というのは感覚的に、コレステロールの薬を使った比較試験の3.0%対1.9%や16.2%対14.1%という数値よりかなり差があると思いませんか。そしてB型肝炎ワクチン接種を受けた人は受けない人に較べて多発性硬化症にかかる可能性が3.1倍という結果が出ています。調査の対象となった多発性硬化症の人の人数が163人と比較的少ないので、統計学的に正確には多発性硬化症にかかる可能性は1.5倍から6.3倍の間です。

アメリカなどではB型肝炎のワクチン接種は子供の時から強制されますが、日本では強制ではないのでひとまずは安心です。しかし厚生労働省はこのデータをどうとらえるのでしょうか。この病気の発症率が日本よりアメリカで高い事に関連があるのかもしれないとするとちょっと恐ろしい事です。今後、職場などでB型肝炎のワクチン接種を強制されたら、このデータを示して総合的に判断する必要が出てきます。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 他人を信頼する事に関係する物質 | トップ | サブグループ解析 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (千葉和夫)
2009-03-19 00:29:21
昭和60年代にB型ワクチンを接種していますが、この当時はHCVが不明の時代、C感染リスクは皆無だったのか?
返信する
原因不明 四肢麻痺 (リハビリマン)
2010-04-14 09:44:16
2009年9月から2ヶ月間 毎日5~8回激しい全身痙攣が起こり脱力、感覚異常、頭痛になり四肢麻痺の繰り返しでしたが、11月から歩行障害(手を振りながらすり足)、握力3キロの状態が戻らなくなりました。全ての神経難病検査、整形外科検査、脳神経外科検査は異常なし。半年後に脊髄液検査したところ異常なし。8月末にB型肝炎ワクチン接種以来症状が出た事を最近知りました。ドクターも可能性はあるが証拠もない。現在、2時間のウォーキングで回復。大腿直筋が弱く上がらない状態。握力10キロまで回復。検査診断では、脊髄空洞症の疑い?胸腺のう胞、心膜のう胞、胸椎のズレ、ストレートネック。感覚異常は肌のチクチク感、熱を当てると脱力発作。ワクチン接種で痙攣を抑えるためデパケン、筋肉を和らげる薬は飲みました。
返信する

コメントを投稿

神経」カテゴリの最新記事