医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

脳卒中で死亡する人が多い県は医療費が低い

2021年09月27日 | 循環器
前回、「老衰と脳卒中で死亡する人が多い県は医療費が低い」という根拠をお伝えしました。
今回はその続きです。

2021年5月22日、日本経済新聞は次の報道をしました。
大往生、医療費抑える モデルは神奈川・愛知・和歌山: 日本経済新聞 (nikkei.com)
日本経済新聞は47都道府県、全市区町村について75歳以上の1人当たり医療費(年齢調整済み)、死因別の死亡数、健康や医療・介護に関わる約400項目のデータを分析しました。医療費が最も低い岩手県は74万6千円、最も高い高知県は113万7千円で約40万円の開きがありました。

「脳梗塞や脳出血などの脳卒中が減れば医療費が抑制できる」などという製薬会社の主張は誤りなのは当初から明らかです。

そもそも、「ある種の疾患が克服できたら医療費は抑制できる」などと言っている人は、残念ながら「頭が悪い」のだと思います。


近年、ある種のガンは治癒・寛解・抑制できるようになってきましたが、それで医療費が下がったかを考えれば答えは明らかです。ガンが治り生き延びた人は、次に一定の確率で認知症になり、高価な薬を使用されるからです。また一定の確率で脳卒中になり、医療費がかかり、そこで生還したとしても次の病気にかかるからです。つまり医療費を抑制するには、「最近まで血圧の薬を飲んでいたぐらいで元気だった人が、急死した」といういわゆる「ピンピン コロリ」が増える必要があるのです。

また、国家全体の医療費というのは「医療で利益を上げたいと考える人々の熱意の合計で決定される」のです。ある種のガンを根治させる薬はとんでもなく高いし(開発者は高く売りたいでしょう)、多種のガンを血液検査で発見できるキットの開発者は、その技術をなるべく高く売りたいでしょう。

上の図は2つの因子の関連を調べるという単解析ですから、未知の交絡因子の存在は否定できません。例えば、「医療費が低い都道府県は、もともと高価な医療技術や予防技術を持っておらず、それが脳卒中の増加の原因となった」などといういわゆる「因果関係の逆転」です。しかし、今の日本で都道府県ごとに医療レベルが異なることなどありえません。どの都道府県でも、脳卒中の治療ガイドラインに沿って治療されます。

脳卒中治療ガイドライン

皆さんもお分かりですよね。上の図を見れば、老衰と脳卒中の多い都道府県は75歳以上の人の一年間の医療費は81万円なのに対して、老衰と脳卒中の少ない都道府県は、なんと20パーセントも高い103万円もかかっています。

日経新聞は炎上するのを恐れて、「老衰が多く脳卒中が少ないのが目指すべきモデル」などと言っていますが、脳卒中で人が死ぬのは自然なことです。「死=悪」ではありません。

今後、研究会などで、「この薬は脳卒中を減らします。だから医療費を削減することができとても有用です」などと、製薬会社の広告塔になって講演している医者には、生卵を投げつけてやって下さい。

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