医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

老衰と脳卒中で死亡する人が多い県は医療費が低い

2021年09月02日 | 循環器


以前、製薬会社は「新しい抗凝固薬(薬価は従来の10倍)を使用すれば従来の抗凝固薬よりも脳梗塞はさらに減り、合併症の脳出血はさらに減る。脳梗塞や脳出血などの脳卒中が減れば医療費が抑制できる。」と言っていていましたが、私は以前、前者の説明は誤りであることを、エビデンスを示して証明しました。

製薬会社の金儲け手法の勝利


今回、「脳梗塞や脳出血などの脳卒中が減れば医療費が抑制できる」という主張も、誤りであることを証明したいと思います。

2021年5月21日、日本経済新聞は次の報道をしました。

大往生、医療費抑える モデルは神奈川・愛知・和歌山: 日本経済新聞 (nikkei.com)
日本経済新聞は47都道府県、全市区町村について75歳以上の1人当たり医療費(年齢調整済み)、死因別の死亡数、健康や医療・介護に関わる約400項目のデータを分析しました。医療費が最も低い岩手県は74万6千円、最も高い高知県は113万7千円で約40万円の開きがありました。

上の図の表題には「老衰と脳卒中で死亡する人が多い県は医療費が低い傾向がある」となっていますが、X因子とY因子の相関を見ると、明らかに統計学的に有意(p<0.05)であると思え、「老衰と脳卒中で死亡する人が多い県は医療費が低い」は明らかです。日本経済新聞の人、相関係数とP値ぐらい計算して下さい。

そもそも、上述の「脳梗塞や脳出血などの脳卒中が減れば医療費が抑制できる」などという製薬会社の主張は誤りなのは当初から明らかです。その主張に乗っかかっている医者たちは恥ずかしいです。

近年、ある種のガンは治癒・寛解・抑制できるようになってきましたが、それで医療費が下がったかを考えれば答えは明らかです。

ガンが治り生き延びた人は、次に一定の確率で認知症になり、高価な薬を使用されるからです。また一定の確率で脳卒中になり、医療費がかかり、そこで生還したとしてもまた次の病気にかかるからです。こういうことが分からない医者は頭が悪いのだと思います。医者でも頭が悪い人はたくさんいます。

医療費を抑制するには、「最近まで血圧の薬を飲んでいたぐらいで元気だった人が、急死した」といういわゆる「ピンピン コロリ」が増える必要があるのです。

つまり、何かの疾病を免れた高齢者が、次の疾病にかかるまでに医療費を使用しないで死亡しないと、あるいはその疾病で一発で死亡しないと医療費は減らないのです。
高齢者はいつか必ず死にます。「死=悪」ではないのです。高齢者が新型コロナで死亡してもなにも悪ではありません。自然なことです。

国家全体の医療費というのは「医療で収益を得たいと考える人々(製薬会社のみならず、医者、看護師、介護士なども含まれます)の熱意の合計で決定される」のです。ある種のガンを根治させる薬はとんでもなく高いし(開発者は高く売りたいでしょう)、多種のガンを血液検査で発見できるキットの開発者は、その技術をなるべく高く売りたいでしょう。
ファイザーやモデルナやアストラゼネカは、なるべく高い値段でワクチンを各国に売りたいでしょう。そういうことです。

上の図は2つの因子の関連を調べるという単因子解析ですから、未知の交絡因子の存在は否定できません。

例えば、「医療費が低い都道府県は、もともと高価な医療技術や予防技術を持っておらず、それが脳卒中の増加の原因となった」などといういわゆる「因果関係の逆転」です。

しかし、今の日本で都道府県ごとに医療レベルが異なることなどありえません。どの都道府県でも、脳卒中の治療ガイドラインに沿って治療されます。

脳卒中治療ガイドライン

製薬会社の社員は、もう二度と「脳梗塞や脳出血などの脳卒中が減れば医療費が抑制できる」と言わないで下さい。
その主張は間違っています!!


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