医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

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高齢者の男性では女性ホルモンが低いと骨折しやすい

2006年08月08日 | 整形外科
エストラジオールは主に胎盤、卵胞、副腎皮質で合成・分泌されているステロイドホルモンの一種で、女性では多くの重要な役割を果たしている女性ホルモンです。しかし、女性ホルモンだからといって男性にはないわけではありません。

正常値は
男性: 10~60 pg/ml
女性(閉経前): 30~400 pg/ml
女性(閉経後): 5~18 pg/ml (pg/ml = ミリリットル単位当たりピコグラム)

で、閉経後の女性では男性の正常値より低くなる事があります。この女性ホルモンが低いと骨の密度が低いという事は以前からわかっていましたが、骨折、特に罹患すると高齢者ではその後の生活に重大な影響を与える大腿骨頚部骨折の発生頻度との関係はわかっていませんでした。最近、これらの関係に関する研究の結果が発表されました。

Esrtadiol, Testosterone, and the risk for hip fracture in elderly men from the Framingham study.
The American Journal of Medicine. 2006;119:426.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★☆)

研究の対象は1981年から1983年の間に、血液中のエストラジオールを測定した793人の男性(平均年齢71歳)で、血液中のエストラジオールの値により低値群(2.0~18.1 pg/ml)、中間群(18.2~34.2 pg/ml)、高値群(34.3 pg/ml以上)に分けられ、1999年まで重傷の外傷が原因以外の大腿骨頸部骨折の発生率が調査されました。

結果は、1,000人あたり低値群で11人、中間群で3.4人、高値群で3.9人の大腿骨頸部骨折の発生がありました。年齢や喫煙状況、身長、肥満度を考慮して調整した発症率は、低値群では高値群の3.1倍でした。

テストステロンという男性ホルモンの値でも同様な調査を行いましたが、値の違いによる差は認められませんでしたが、エストラジオールとテストステロンが両方とも低い場合はそうでない場合と比べて発症率は6.5倍でした。

この結果は臨床的に非常に有用です。健康保険の適応のことは別にして、高齢者の男性ではエストラジオールとテストステロンを測定して、低い場合には骨密度を上げるような投薬を施しておくことが可能となると思います。


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