医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

新型コロナ治療薬 ラゲブリオはもはや効果がない

2024年06月02日 | 感染症
現在、論文二編の提出後 修正中で、専門医試験の書類審査も依頼され四苦八苦しておりますので、更新が遅れております。

ちなみに、四苦八苦とは、皆さんご存じの、生・老・病・死の四つの苦しみに加え、
愛別離苦あいべつりく(愛するものと別れる苦しみ)
怨憎会苦おんぞうえく(憎むものと出会う苦しみ)
求不得苦ぐふとくく(求めても得られない苦しみ)
五陰盛苦ごおんじょうく(心身の苦痛)      の八つです。

私が現在四苦八苦しているのは正確には、求不得苦ぐふとくく(求めても得られない苦しみ)でしょうね。

さて、現在新型コロナウイルス感染症の内服治療薬としてラゲブリオという薬があります。
しかしこの薬は高価で、1カプセル2,357円、1回4カプセル、1日2回、5日間内服しないといけないので、薬剤費は合計94,280円かかります。

ラゲブリオが効果があると根拠になったのは以下の論文です。
調査の対象となった条件に注意して読んでみて下さい。

Molnupiravir for Oral Treatment of Covid-19 in Nonhospitalized Patients
N Engl J Med 2022;386(6):509-520.


【方法】
試験期間の2021年5月~11月当時は、デルタ株を中心に高病原性の変異株が流行中で入院例や死亡例が多く、また新型コロナウイルスワクチンの接種も開始されたばかりであったことから、対象はワクチン未接種で重症化リスク(高齢・肥満・担癌など)を少なくとも1つ以上持つ新型コロナウイルス感染患者とされました。
1,433人がラゲブリオ内服群と非内服群に無作為に割り当てられ、内服後29日後までの入院or死亡が調査されました。

【結果】
その結果、これら重症化リスクが高い患者ではプラセボ群(9.7%)に比べモルヌピラビル内服群(6.8%)は入院や死亡が有意に減少しました。

しかし最近は新型コロナウイルスも当時より弱毒化しワクチン接種も施行され、市民の背景も変わってきました。そこで条件を最近の状態で調査した論文が発表されました。

Molnupiravir plus usual care versus usual care alone as early treatment for adults with COVID-19 at increased risk of adverse outcomes (PANORAMIC): an open-label, platform-adaptive randomised controlled trial
Lancet 2023;401(10373):281-293.


【方法】
オミクロン株流行初期の2021年12月~22年4月に新型コロナワクチンの接種が進んでいた英国を中心に行われた試験で、登録者の94%に3回以上の接種歴がありました。
対象は50歳以上、または18歳以上で新型コロナ感染関連の危険因子あるいは併存疾患があり、市中で発症後5日以内の入院していない患者とされました。

主要評価項目は、登録時点から28日以内の入院 or 死亡とされました。26,411例が標準治療+ラゲブリオ併用群と標準治療単独群に1:1でランダムに割り付けられ、このうち併用群12,529例と標準治療群12,525例の間で主解析が行われました

【結果】
その結果、入院 or 死亡の頻度は、併用群が1%(105例)、標準治療群も1%(98例)で有意差はなく重篤な有害事象はそれぞれ0.4%、0.3%で、ラゲブリオを併用する・しないにかかわらず効果は変わらないことが示されました。


今や、効き目がなく値段も高いラゲブリオは、かなり使用対象者を絞り込まなければ使えませんね。



ブログランキング参加しています。ぽちっと

「ブログランキング」

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 精神・人格異常(その31)「... | トップ | 魚の油 EPAの製剤、宣伝され... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

感染症」カテゴリの最新記事