橡の木の下で

俳句と共に

「寒の雨」平成29年『橡』3月号より

2017-02-27 10:36:22 | 俳句とエッセイ

 寒の雨       亜紀子

 

芥狙ふ鴉も仕事始かな

今朝の富士雲の真綿を被てをりぬ

百合鴎夕焼うするる京の空

うすずみの如き交はり寒の雨

冬ぬくき母の口ぐせありがたう

受験子の列雪雲も押し移り

くぐるたび真白に現るる巫女秋沙

両の耳音で蓋して冬の街

自転車の稽古ころぶな寒四郎

庭草に霜の花噴く寒さなり

蝶番きしむ寒中体操に

早番の子に凍て星のさめゐたり

ささくれて春を待ちをり唐楓

飛梅と立札たちぬふふみをり

鶺鴒の忙しせはしと寒ゆるぶ