橡の木の下で

俳句と共に

草稿09/30

2022-09-30 11:51:48 | 一日一句
森の戸をぎいとひらいて小啄木鳥来る  亜紀子

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第28回「橡の芽投句欄」選後鑑賞

2022-09-30 11:42:44 | 小・中学生の俳句募集
橡の芽投句欄  第二十八回
               選  亜紀子

一席    
     吉岡 中二 山岸奈々芭
どの木にも雨粒ひかる夕立後
 
 ずいぶんと降った夕立のあと。枝えだにかがやく雨だれ。その美しさを素直に詠んでしらべもなめらか。、

二席    
     吉岡 中三 飯田楓乃音
店先に夕立を聞く雨宿り 
 
 こういう経験あります。雨あしを見ているのでなく、音を聞いているというところ、夕立の実感があります。

三席
     群馬 小六 ベネット美嵯
緑陰でワークはかどる夏休み 
 
 木の下で宿題とはうらやましい。気持ちがよくて本当にはかどりそうです。そのあとは何して遊ぶのでしょう。

秀逸

     岐阜 中三 平岩美留
新しい本の匂いは春の匂い     
    
     岐阜 中三 土屋亘
雨の後桜でうまる水たまり

     吉岡 中三 林鷹宏
水溜り夕立終わりの赤い空

     群馬 中一 ベネット大峨
雨あがり蛙も跳ぶよトランポリン

     福山 小一 江竜陽咲
ともだちといるかごっこでプIルだよ

佳作   

     岐阜 中二 小森琉翔
新学期制服姿で引き締まる

     岐阜 中一 佐伯颯太
伝統の高山祭で春がくる   

     岐阜 中二 佐伯美月葵
お兄ちゃん試験終わってパラダイス  

     岐阜 中二 長谷部流星
新クラスたけのこみたいな成長だ 

     岐阜 中二 馬場翔
花見して桜を米にトッピング  

     岐阜 中二 福井心満
ディスタンス守って行きたいいちご狩り 

     岐阜 中三 神谷祐香
チューリップ入学式をながめてる 

     岐阜中三 久野柚季
新クラス桜の下で写真とる  

     岐阜 中三 酒向律希
春休み明けたばっかでテストかよ  

     岐阜 中三 道家佑斗
橋の裏燕ビュンビュン飛んでいる  

     東京小一 吉藤涼真
つちほってみつけたみつけたしおひがり 

     横浜 小一 吉藤康太郎
かせんじきをパパとはしったなつのあさ 

     四日市 小六 榊史帆
かけ声でだしが進むよ少しづつ 

     府中 小二 羽瀬航太郎
食べられたそだてたトマトはおいしいな 


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「夜の秋」令和4年「橡」10月号より

2022-09-30 11:38:43 | 俳句とエッセイ
   夜の秋   亜紀子

平和宣言蜻蛉ゆきかふ風の中
玉虫を吐く一樹あり終戦日
夏逝くもいまだ幼き鴉声なり
幼らに夢みるやうな氷菓子
思ひ出すいつも足らずの夏休み
戯れあへるをさなのやうにゑのこ草
波音の俄かに近し夜の秋
従兄弟らは兄さんばかり盆仕度
盆道の背戸の崖道灯をつらね
青春も穂草もばらけ夏了る
鬱屈を曝さるる夜の稲光
雀蜂トラップ掛くる梯子とふ
納涼の火影に虫の鳴きそむる
納涼祭襷乙女が琴運ぶ
夢ひと文字蓮一蕾を床に挿し


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「コロナ顛末」令和4年「橡」10月号より

2022-09-30 11:31:47 | 俳句とエッセイ
コロナ顛末     亜紀子

八月二十四日(水)
 三日間の信州登山の旅を終えた夫帰宅。中一日は雲に覆われたそうだが、霧雨のハイマツ帯では雷鳥親子が目の前を過ぎり、翌朝はブロッケン。天気が悪いなら悪いなりにかえって好都合なこともあり堪能したとのこと。同行の二人も喜んでいた由。

八月二十五日(木)
 昼過ぎ夫からメール。午前中のPCR検査は陰性。
毎週二回、火曜と木曜に職場の自分の研究室で学生さん達のコロナの検査を続けており、自身についても必ず検査している。
 夕刻、息子は週末を友人宅で過ごすとのことで先に食事、入浴を済ませて出かける。
 遅めの夕食を我々二人で終えていつも通りの一日が終わると思っていると、夫のメール。発熱、三十七・九度。午後から頭痛がして帰宅時には悪寒があったとのこと。
 モットハヤクニイエヨ。六十八サイ、ノーワクチン、コノダイリュウコウジニデアルクトイウノハ、ソモソモ、、、。

八月二十六日(金)
 夫体温三十八度台から三十九度まで上がる。喉が猛烈に痛むよし。アボカドシェーク、バナナシェークは喉を通り、申し分ない量を摂取。経口摂取できるのは安心。受診を勧めるがその気がない。職場に行けば検査キットがあるが車で一時間かかる。近所のドラッグストアを当たると一番近いところに在庫があり家族三人分を購入。とにかく発症した夫が検査。強陽性。なお受診を拒む。
 保健所に相談する。六十五歳以上は陽性の自己申告システムは利用できず、必ず医療機関を受診し、医療機関から保健センターと繋いでもらう必要ある。システムに乗ればあちらから連絡をくれる。ちなみに家族は百パーセント感染するよし。
 “重症化リスク”で脅かして近くのクリニック受診に漕ぎつける。

八月二十七日(土)
 夫熱下がらず。三食主食はシェーク、お粥。 私が感染対策取って部屋に入らないのが気に入らない様子。センターから電話がありホテル療養の予約。登山仲間の他の一人も発熱したとの連絡。午後、ついに私も発熱。抗原検査をしろと言うが、もはや疑いはないので療養解除の時に念のための陰性確認に使いたいと言うと断固検査をしろと長いメール。三十九度の熱の中での凄い執念が怖いので折れる。貴重なキット使用。間違いなく陽性。しかし受診できず私は保健所と繋がれず。

八月二十八日(日)
 夫の熱は三十七度台に。私は三十七度台から三十八度台でそれ以上は上がらないが、頭痛がひどい。一日横になって過ごす。胃腸がどろんと動かず、水分補給のみ。一日中夢を見る。子供達三人が田舎の畳の部屋で遊んでいる。そうか実家に預けたんだっけ。いやそんな覚えはない。皆どこに避難しているのか。真ん中の娘がしくしく泣いている。背中を撫でてやる。ショートカットの細いうなじが哀れ。大丈夫、大丈夫と言ってやる声が出ない。うつつに戻ってくる。ああ、お姉ちゃん二人は独立してるんだっけ。ほっとする。

八月二十九日(月)
 夫再び調子が良くないが、急性期は過ぎたという。私も起きることができて、鉢の水遣り、生き物に餌。
昨日夫はスーパーに買い物に行っちゃったらしい。療養期間中の外出は厳禁、公衆衛生上の犯罪やん。
八月三十日(火)
 息子が必要なものを取りに来る。部屋には入らず。夫は昨日ホテルが空いた連絡を受けたが断ったのだそう。それも仕方ないか。買い物はネットスーパーに頼む。夫が九月四日、私は五日までの間にこのまま回復していれば晴れて解除。

 夢のことを考えている。生々しい現実のそのもののようだった。記憶の箱にたくさん詰まっているのだろうか。自由に取り出せたら。いや、現実を忘れてしまうかもしれない。何十年も置き去りの昔のアルバムはどうなっているだろう。

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「選後鑑賞」令和4年「橡」10月号より

2022-09-30 11:26:04 | 俳句とエッセイ
 選後鑑賞     亜紀子

賣られゆくひよこに低き夜店の灯 香西信子

 夜店は夏の風物詩。裸電球を連ねた小さな露天商が並ぶ。現在は祭礼や縁日、あるいは新しいイベントの折などに限られるだろうか。掲句、あえて旧字を用いているのは遠い昔の思い出の夜と解した。ぴい、ぴいと売られていくひよこの哀れと、幼き日の思い出の切なさが綯い交ぜに。
 夜店ではないが、私にも露店のひよこに思い出がある。ふるさとの三月の雛市に必ずひよこが売られていた。浅春の風冷たき頃。市のひよこは卵を産まないしすぐ死んでしまうよと言われていたが、二つ買ってもらい、すり餌を与えて家の中で飼った。姉弟と皆で見守った。暖を取るために父が吊るし入れてくれた裸電球が掲句の夜店の灯に重なる。幸いにもちゃんと大きくなって庭で放し飼いに。果たして今でもあのひよこは売られているだろうか。

爽やかやスマホ使はぬ旅三日   中野順子

 これはなかなか果断な旅と感じ入った。この三日間はスマホを触らぬと決意してのことと想像する。若者たちのように常にスマホを覗き、SNSでどこかに繋がっていないと落ち着かぬというわけではないと思うが、作者世代であっても一日のうちに一度もスマホを触らないということは難しい世の中ではないだろうか。偶然、スマホをかざせばなんでも用が足る便利さが新聞の四コマ漫画のネタになっていた。買い物の支払い、電車の改札、言わずと知れたQRコード、かざすだけで全てOK。眩しい時も額にかざせばときて、いや、そこは帽子か日傘だろうという突っ込みでオチ。
 掲句では旅の終わりに爽快な空を見上げたことと想像する。

昼寝から覚めて独りや夕間暮   藤原省吾

 昔も昼寝覚はいつも寂しい気分を纏っていた。一緒に遊んでいたはらから、いとこ達の姿はなく、眩しかった真夏の日差しも陰り、妙に静かでどこか知らない所に来てしまったような。間もなく夕飯の支度の匂いが漂いはじめ、はたと我に返る。
 還暦を過ぎた今、あの頃は良かったなと思わずにはいられない。

かなかなや雨夜ひとりの講義室  豊田風露

 若い人である。夜になっても一人大学の講義室に残っているのはどういう事情であろうか。レポートの整理が終わらなかったのか、あるいは教授に何か頼まれた仕事でもあるのだろうか。分からない。木々の葉を伝う雨音と、夜の蜩。落ち着いて学ぶに相応しい窓ではあろうが、ちょっと寂しい。昨今のキャンパス、やはり明るいうちにお帰りなさいと声かけたくなった。

暑き日やコロナ騒ぎに草臥れて  伊田トキ子

 終わらないコロナに疲れ、過去例を見ない猛暑の日々にいっそう疲れ。掲句の「草臥れて」に共感しきり。さりながら元気印の作者の句の数々を見ると、昔々明治生まれの祖母が「くたぶれた」と言って案外涼しい顔をしていたのを思い出した。

持て成され越の漬茄子丸かじり  太田順子

 お持て成しというのだから、茄子そのものが新潟の特産品。またその漬け物も格別のものと思われる。藍も鮮やかな塩漬け。浅漬けで皮は柔らか、丸かじりが一番美味しいのだろうと想像するだけで本当に美味しそう。橡集作者は茄子の香の物好きが多い印象あり。

たちまちに三塔叩く大雷雨    小原緑

 三塔とは比叡山延暦寺の東塔、西塔、横川の三つの地域の総称、すなわち延暦寺の異称とある。迫ってきた黒雲が一瞬でお山を驟雨に包んでしまったその烈しさだろうか。一方で、塔とは八坂の塔、清水寺の塔、あと一つどこか、三つの塔で結んだ辺りの大夕立、騒めきたつ京の街を思い浮かべもする。




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