やうやうに涼風立つに水中り 亜紀子
緑陰 亜紀子
浮御堂涼風受けて橋なかば
涼しさや御堂を洗ふ湖の波
梅雨晴れて千の仏が湖へ向く
水無月の湖鈍色に近江富士
すずめうりほどな西瓜が蔓の先
生きものの葉裏にやすむ梅雨青し
蜜蜂の小さきエンジンひもすがら
泰山木象牙の珠のひらきそむ
日陰蝶いわむろに湧く神の水
はたおりや星合神事待つ真昼
梅雨明けの星を並べて寝静まる
忽と逝き緑陰ひとつ残さるる
緑陰に紫煙をのこし別れけり
声落す五位に門限有りや無しや
熊蝉の沸騰窓を焦しをり
装ひを凝らしし足に蚋の跡
満月や夜濯ぎの衣影垂らし