橡の木の下で

俳句と共に

「緑陰」平成25年『橡』9月号より

2013-08-28 09:02:40 | 俳句とエッセイ

  緑陰     亜紀子

 

浮御堂涼風受けて橋なかば

涼しさや御堂を洗ふ湖の波

梅雨晴れて千の仏が湖へ向く

水無月の湖鈍色に近江富士

すずめうりほどな西瓜が蔓の先

生きものの葉裏にやすむ梅雨青し

蜜蜂の小さきエンジンひもすがら

泰山木象牙の珠のひらきそむ

日陰蝶いわむろに湧く神の水

はたおりや星合神事待つ真昼

梅雨明けの星を並べて寝静まる

忽と逝き緑陰ひとつ残さるる

緑陰に紫煙をのこし別れけり

声落す五位に門限有りや無しや

熊蝉の沸騰窓を焦しをり

装ひを凝らしし足に蚋の跡

満月や夜濯ぎの衣影垂らし