南天の日々に色づく厠窓
薬滴にまたもちなほる月の供花
亜紀子
穂を孕み 亜紀子
をさなくて鵯の子蝉を食みこぼす
水と瑠璃ささやく午後の蝶蜻蛉
冷房に鎮座家康顰像
残暑厳し雪村龍虎間のび顔
一瞬の黙街にあり大夕焼
漆黒の天街に夜涼の灯の満ちて
暑に細る食思は知らねばった簇
無音なり濃き影曵いて黒揚羽
飽きもせで相打ち離る蝶とんぼ
地を冷やすまだきの雨や盆の入
ことさらに穂草にあそぶ盆の風
風立ちてしこ草に秋いたりけり
身の内の澄めば空澄む季節なり
蜻蛉の触れゆく田の面穂を孕み