ふと浮いて沈む思ひ出冬灯
山茶花のこぼるる門のいらへなき
亜紀子
冬始め 亜紀子
小鴨らの電車ごつこは波に乗り
青鷺のパントマイムが餌を得たり
曳山の桜紅葉に触れゆけり
路地はさみ受験子の窓灯り合ふ
草かげを出て蟋蟀も月浴びる
渡りゆく野駒の喉の真くれなゐ
見るとなく夜ごとの月の明り窓
真つ新の双眼鏡に小鳥来る
神還る腕落とされし木々の列
風に振る番号に冬始りぬ
生ひそろふ青き穭の湖国なる
観音の小さきひと足秋の声
漂へる白鳥の尻汚れをり
白鳥の首蛇となる羽づくろひ
冠を被きし鳰も水くぐる