橡の木の下で

俳句と共に

「万博記念公園」橡会報 平成27年1月号

2014-12-28 08:41:29 | 俳句とエッセイ

   万博記念公園  亜紀子

 

 日本万国博覧会が大阪吹田市の千里丘陵で開かれたのは一九七〇年。当時の私は小学生で、姉や弟と共に母に連れて行ってもらった記憶はある。どこも白く埃っぽく輝いてとても暑かったこと以外に細かなことは覚えていない。あれから四十四年、十一月のひと日、茨木、高槻の句会「澪の会」の万博記念公園吟行に参加した。

 岡本太郎の太陽の塔が広い芝生の真ん中に立ち、黄葉したメタセコイアを従え諸手を広げている。遠見には深いトルコブルーであった塔の瞳が間近に見上げると白い。目の部分は丸い穴で背景の秋空と雲を透かして見ていたのだった。腹の真ん中にもう一つ顔があってついと横を向いた唇が口笛を吹いている。見渡せば、といって広大な園を一度に見晴るかすことはできないが、どちらを向いても木々と草花。万博終焉の二年後に公園として開かれ、それから樹木は成長し続けたわけだ。欅や楡の大木の黄葉、ふうの木の深い紅。小流れを巡らす梅林や花を咲かせて小春の虻蜂を寄せる茶畑もある。篁を渡るかすかな風の音。自然観察学習館に立ち寄って、気になった草の花の名を教えてもらう。目白、四十雀が過り、どこかで小啄木鳥の声。折々足許に見るプレートに且つての万博のパビリオンの名が刻まれていた。今日のコースは園のほんの一部とのこと。「澪の会」では毎年新年吟行は此処で開催、ほぼあらゆるルートで園内を巡っているそうだ。また季節ごとにそれぞれの風情があるという。

 当日の句会では佳句がたくさん発表された。皆熱心なベテラン作家であるから当然と思い、また、何度も足を運んで慣れ親しむ場所であるからこそとも思う。いつも良く観察しているものから却って新しい言葉、吟味された言葉が紡ぎ出されるのだろう。二〇一五年、私も時間をかけてものを観て、味わい、言葉を育てていきたい