つんのめるやうに暮れたり小晦日 亜紀子
コロナ読本 亜紀子
トレモロの風のなんきんはぜもみぢ
綿虫も白いフリース街を行く
冬の星ひとつは人を乗せてゆき
黄落の木椅子寄り来て道を説く
民謡を復習ふフィドラー日向ぼこ
重ね着てコロナ読本読み耽る
瑠璃秘して襤褸をよそほふ秋の蝶
子ら遊ぶやうに小春のしじみ蝶
石蕗に来て小さき蝶が時惜しむ
月寒く俄か宿りの黄蝶かな
秋夕焼け山と名のつく町の辻
寝ねがての月を濡らすやひと時雨
臈たけて花園に咲く蕎麦の花
浮れ鵯食ひ放題の樟の実に
ひと匙の砂銀漢の旅果てて