新年 亜紀子
昨年、夏休みの終わる頃のこと。買い物を終えスーパーマーケットから出てきた母子。五歳くらいの女の子と、お母さんは赤ちゃんを乗せたストローラーを押している。女の子が不意に「もう夏が終わるね」と呟きのような一言を発した。幼稚園児の口調とも思えない妙に大人びた響きに思わず耳を傾けた。スーパーの庇の夕日は確かに夏の終わりを告げていた。休みが終わってしまうのを惜しむのか、コロナ第七波と猛暑で大変だった休暇に倦んだのか、幼の胸の内は分からない。それでも何かたくさんの思いの詰まった一言に聞こえた。単に時が経った、カレンダーが一枚めくられたということを示す記号でなく、まるで俳句の季語のようだなと。星眠先生の「晩夏」の句のいくつかが思い浮かんだ。
新しい年が始まる。これまで本当に様々なことがあって令和五年に抱く思いもまた様々だろう。「新年」この一語に新しい希望をのせて一歩前進したい。
凍天を焔つらぬく日の出前 星眠
(火山灰の道より)