橡の木の下で

俳句と共に

草稿10/31

2023-10-31 20:31:24 | 一日一句
青々と穭田広き日和なり  亜紀子

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草稿10/30

2023-10-30 21:48:13 | 一日一句
スポーツの秋よ朝練寝て通ひ  亜紀子

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草稿10/29

2023-10-29 22:07:10 | 一日一句
秋晴や伊吹の傷も隠れなき
鴨早も都の水になじみをり
毀たるる町屋のほとり蓼の花
白川の軒にかはせみ羽を干す
日曜や俄か紅葉の疎水べり
帰るさの車窓の望が逃げてゆく
          亜紀子

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「ゆく夏」令和5年「橡」11月号より

2023-10-28 15:15:19 | 俳句とエッセイ
 ゆく夏    亜紀子
 
旅終へし子のとく寝ぬる夜の秋
挨拶の声変はりして新学期
野つ原やとんぼも子らも飛び回り
大欅夏枯れの枝を広げ立つ
ゆく夏や貝がら色の夕焼け雲
みすずかる信濃の野路は花の園
露を被て盗人萩も花野なす
虫すだく病舎の裏の昼下がり
思慮深き二声三声秋鴉
夕立の止みし茶房に長居かな
かやつり草線香花火の穂の揺るる
秋暑く園に飛び火の彼岸花
高階の鉢に卵を秋の蝶
小灰蝶老いの目に孵化確かむる
高楼の肩よりのぼる今日の月

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「七階の蝶」令和5年『橡』11月号より

2023-10-28 15:08:19 | 俳句とエッセイ
  七階の蝶     亜紀子

 残暑と呼ぶよりは未だ真夏のような九月。彼岸花の開花が遅い。おそらくこの暑さのせいだろうと思っていると、朝晩だけはいくらか過ごし易くなった。と、間もなく毎日歩いている徳川園の菖蒲田の畔に数本咲き始めた。そのうちに街路の並木の下、僅かな土からも次々と茎が伸び、白やピンクの園芸種のリコリスも一斉に。徳川園の彼岸花は去年見なかった場所にもあちこちと顔を出して大賑わい。種を結ばず分球で増える花であるから、園丁が球根を補植したものらしい。引っ越す前に借りていた家の小さな庭にも毎年必ず咲いていた。今はあの家も庭も無くなってワンルームアパートになっている。彼岸花も消えてしまっただろうが、球根を幾つかご近所に分けておいたから、そちらの庭で咲いているだろうか。
 我が七階の部屋のベランダに並べた鉢物。小さなレモンの木に揚羽蝶の幼虫を見つけた。すでに丸々と太った緑色の芋虫が二匹。一匹は大きく、もう一匹は二回りほど小さい。同じ時期に産み付けられた卵が孵ったものだろうが、貧弱なレモンの木では餌が均等に行き渡らなかったらしい。数日して小さい方が動かなくなって、翌朝蛹になっていた。大きい方は見当たらない。以前の庭の揚羽蝶は置きっ放しの自転車のカバーに取り付いて蛹になった。大芋虫も木を離れたのかと、壁や鉢の陰を探してみるも見つからず。鵯がベランダ近くの松の梢でいやにうるさかったから、あるいはよく目立った方は餌食になってしまったのかも。ナミアゲハは卵から羽化するまでに二ヶ月と書かれている。気付かずにいたのは暑さを避けて夕方日が落ちてから、どうかするとすっかり夜になってから水遣りをしていたせいだろう。
 徳川園の庭のほかに周囲に土らしい土はない。どんどん気温は高くなるので朝から締め切って冷房漬け。その窓にひらひらと蝶らしい影。すわやと見ると揚羽ではなくて小灰蝶のようだ。双眼鏡を出してきて覗く。ウラナミシジミ。表は普通の小灰蝶のようにも見えるが少し大きめで、羽を閉じると茶と白の波状の縞模様、後翅の先にオレンジ色に黒点のアクセントとさらに小さな尻尾のような突起。かつて中里さんに写メールで教えてもらった可愛い蝶だ。黄金狸豆の葉にしきりに卵を産み付ける仕草。蝶がいなくなって確かめる。老眼鏡と虫眼鏡を駆使、小さな小さな白い卵がいくつも葉の表に付いている。全て孵れば見ものだ。
 夕方、レモンの木の蛹は緑色から枯葉のような色になった。暑さにやられたかなと心配になるも、翌朝、既に蝶の姿でぶら下っていた。小型の蛹にしては成虫は随分大きい気がする。お昼になる前にどこかへ飛び立って行った。
 それから毎日豆の葉を点検。四、五日くらいしたろうか、葉の表面に色の違う模様のような部分ができて、どうやら孵化した幼虫の食痕らしい。その幼虫を探すが虫眼鏡も役に立たず。もう少し大きくなるのを待とう。
 さらに、今度は三つ並んでいるパセリの鉢の一つに鳥の糞のような芋虫一匹発見。これは黄揚羽の幼虫。数日すると緑に黒の縞にオレンジの点々を施した派手な衣装に。これがパセリの繁みの中に居ると案外目立たない。蝶になるところが見たいもの。
 ところで、殺虫剤会社のホームページでは蝶(幼虫)も害虫の一種。ナミアゲハは柑橘類、ウラナミシジミは豆類、キアゲハはセリ科の野菜。七階のベランダは畑ではないから芋虫の食べ放題バイキング。しかし去年はこんなことは一度も起こらなかった。もしかしたら猛暑で昆虫の世界にも多少の異変があったのかもしれない。
 毎晩田舎の姉に電話を入れている。あちらも暑かったのは一緒だが土の上に建つ家屋に大きな橡や辛夷の木々の陰があり、外から帰ると随分と涼しいそうだ。
樹木の陰、草や花や土の匂い、それらが本当に恋しく思われたこの夏がようよう秋を迎えようとしている。これからは穏やかな季節ができるだけ長く続きますように。

泉湧く岩より翔てり墨流し蝶 中里秀行(平成二十三)
臭木咲き麝香揚羽の群れさかる 同(平成二十四)
孔雀蝶あざみ一本吸ひつくす  同(平成二十五年)
日陰蝶ひらり触れゆく山路かな 同(平成二十七年)
舞ひ落つるあさぎまだらや葛の谷 同(平成二十九年)

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