畝黒し卯月の雨に乱れなく
若葉して櫟は池に枝を浸す
亜紀子
涅槃変 亜紀子
山雀の春の午餐や洞のぞき
苗床の準備ととのふ寒戻り
春遅々と軋む身ぬちの蝶つがひ
雨に日に蕗の薹立つきのふけふ
日を負うて甍を越ゆる春鴉
並びたる石も泣きをり涅槃変
涅槃図や畳冷たく拝しけり
山茱萸に水深からず高瀬舟
それぞれの家路や涅槃望の月
みちのくの白山吹の芽生えなり
汝もまた朝餉じたくか春鴉
雨ながらすずめ唱和の彼岸入り
歳々に白く大きく雪やなぎ
蕗のたう立ちて小綬鶏声まろぶ
夜すがらの嵐に堪へて花三分