橡の木の下で

俳句と共に

「黄落」平成30年『橡』2月号より

2018-01-28 05:19:50 | 俳句とエッセイ

 黄落    亜紀子

 

掻きに掻き銀杏落葉の袋詰

はぜは実をたわわに吊りてアドヴェント

読み耽る石牟礼道子十二月

俄か寒気温予想を聞きてより

虚飾にも心をどりぬクリスマス

さざんかに風や浮き世に曲り角

銀杏枯る小さき火伏せの神祭

記憶保持ガムてふ噛んで師走かな

青鷺の眉一筆に冬枯るる

冬芹や水あたたかく湧くところ

鵤どち時雨のごとく声降らす

白々と広々と冬紫宸殿

 

 町野けい子先生を送る

鴉にも喪ごころ見ゆる霜の朝

黄落や出棺の笛ひとつ鳴り

マロニエもその夜落葉を尽したる